研究概要 |
弾性線維は組織の弾性力を保つ上で大切な構成要素である。この弾性は弾性線維の主成分であるエラスチン自体に由来するが、弾性線維がどのような三次元構造を構成するかで組織の弾性は大きく変化する。血管壁は人体の中でも弾性を必要とする組織で実際、弾性線維が豊富に存在する。しかしその弾性線維がどの細胞に作られ、どのような三次元構造をとるか不明であった。 我々は22年度~23年度と血管壁弾性線維構造を三次元で毛細血管レベルから大動脈レベルまで階層的に観察する方法を確立し、解剖学会等で発表してきた。それによると、血管壁の弾性線維はメッシュ状であり、血管の直径に応じた密度をとることが走査電子顕微鏡レベルで証明された。またメッシュ構造の詳細は血流方向に垂直であり、内皮細胞の存在と一致することが示された。これにより血管壁内皮下弾性線維は主に内皮細胞によって生産されていることが示唆された。24年度はこれらの成果をまとめ、「Microscopy and Microanalysis, 2013, 19(2);406-414」に掲載された。また同時にこの正常血管壁弾性線維構造のデータを元に血管壁弾性線維三次元観察法を応用して、加齢性の弾性線維欠損を詳細に検討した。Wistar系ラットにおいて、加齢性に尾動脈内弾性板は断裂を生じる。このことは以前より報告されていたが、我々の方法により、破損した微細な弾性線維構造をより愛護的に描出することが可能になった。それにより、断裂には線維構造に由来すると思われるパターンがあることを発見した。また断裂部には微小な再生線維が存在することも構造も合わせて報告している。 これらの現象は動脈硬化症の前病変と考えられ、構造を詳細に検討にできたことは基礎医学のみならず臨床医学にも重要性を持つ。
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