大動脈解離は、突然発症し死に至る、原因不明の疾患である。本研究の目的は、未知である非遺伝性大動脈解離の分子メカニズムをAngiotensin(AT) II-Transforming Growth Factor(TGF)-β系シグナル系に着目し解明することと、解明したメカニズムから大動脈解離の発症予防に関する治療法を考案することである。そのために本年度実施した実験計画は、以下の2点であった。 【計画1:大動脈解離組織の部位別にATII-TGFβシグナルの役割の解明】 大動脈疾患症例の手術時に得られた大動脈組織を用いて培養実験を行った。培養ヒト大動脈組織において、ATII刺激の介入を行い、培養上清ならびに組織中の炎症関連分子(Smad2、extracellular signaleregulated kinase、matrix metalloproteinase-9)の解析を行った。 【計画2:マウス大動脈解離モデルにおけるATII-TGFβシグナルの解析】 ATII-TGFβシグナル系の解離発症における役割を解明するため、マウスにAng IIを1-2週間持続投与することにより、30%程度の頻度で急性大動脈解離を発症するモデルを確立した。このモデルマウスの大動脈組織中で、c-jun N- terminal kinase等の炎症系シグナル分子の活性化を確認した。またさらに、JNK阻害により大動脈解離発症防止の可能性が示唆された。
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