脊髄虚血後遅発性対麻痺モデルにおける遅発性脊髄神経障害にヒストンの脱メチル化あるいなどのエピジェネティクス的修飾が関与しているかについて検討する目的で平成24年度研究を行った。マウス遅発性脊髄障害モデルは、大動脈の5分間遮断により作成した。マウス遅発性脊髄障害では、症状発症時にTNFαやIL-1βなどの炎症性サイトカインの産生が激増することを見出したことから、その上流にあたるToll様受容体の関与について検討した。その結果、Toll様受容体のTLR4ノックアウトマウスでは遅発性対麻痺が発症しないことが明らかとなった。このことから、TLR4のリガンドがこの病態に関わっていることが示唆された。TLR4のリガンドとしてHMGB-1が知られているが、この遅発性対麻痺モデルの脊髄において、病態発症時にHMGB-1が細胞外で検出できた(免疫染色)。このHMGB-1はヒストン蛋白の一種でその脱メチル化による核外に放出されることが知られていることからヒストン脱メチル化酵素阻害薬による遅発性対麻痺の発症を抑えることができるか検討した。その結果、ヒストン脱メチル化酵素阻害薬を虚血後24時間以内に腹腔内投与したところ、遅発性対麻痺の発症を抑えることはできなかった。さらに病理組織学的検討を行ったところ、虚血後48時間では脊髄前角の神経細胞変性ならびに空砲化を防ぐことはできなかった。これらのことから、マウス脊髄虚血後の遅発性対麻痺の病態生理にエピジェネティックス的反応の関与は大きくなく、それに対する阻害薬の効果に期待はできなかった。
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