研究課題/領域番号 |
22591552
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
谷口 繁樹 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (90183467)
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研究分担者 |
内藤 洋 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (00316069)
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キーワード | 再生医療 / 組織工学 / 人工心筋組織 |
研究概要 |
球状の人工心筋組織を作成するのに必要なコラーゲン、馬血清、鳥胎児抽出物と細胞の混合物の条件設定を行った。これまでの検討では発生する収縮力やカルシウム、β刺激薬に対する反応性などについて安定した結果が得られていなかったため、至適な培養条件を決定する事を目標とした。 人工心筋組織の作成および検討は従来の方法を踏襲して行った。即ち、新生児ラットの心臓から単離した細胞とコラーゲンを混合した心筋細胞混合物をドーナツ型の鋳型内で培養することにより人工心筋組織を作成した。組織形成に影響を与える可能性があるコラーゲン(自家製と購入した物)、馬血清(HS、購入した2種類)、鳥胎児抽出物(CEE、自家製の2種類)のそれぞれを用いて人工心筋組織を作成し、肉眼的観察、顕微鏡的観察、収縮力測定試験、分子生物学的手法を用いて比較検討した。 全ての条件で顕微鏡的、肉眼的にリング状の組織の形成、拍動が観察された。しかし、従来の報告より発生する収縮力が小さく、また、報告されているようなカルシウムやβ刺激薬に対する収縮力の上昇は確認できなかった。リアルタイムRT-PCRによる検討では同じHSとCEEを用いた場合、購入したコラーゲンを用いて作成した組織より自家製のコラーゲンを用いて作成した組織の方が、組織内のαMHCやβMHCなどの心筋の収縮に関連する蛋白の割合が大きいことが明らかとなった。また、自家製のコラーゲンを用いて組織を作成しても、HSとCEEの組み合わせによって、αMHCやβMHCなどの割合などが異なることも明らかとなった。また、長期間の培養では心筋細胞の割合が減少することも明らかとなった。現在はこれらの問題点を改善するべく、培養条件の更なる検討を継続している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コラーゲンゲルと単離した心筋細胞の混合物を球状の鋳型に入れ培養することによって、移植に適した形状である球状の人工心筋組織を作成し、その組織に伸展刺激を加えることによって細胞の配行、収縮力の変化などについての検討を行う予定であった。しかし、十分な収縮力を発生する人工心筋組織の作成に成功せず、人工心筋組織作成の条件設定を継続している状態である。
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今後の研究の推進方策 |
十分な収縮力を発生する人工心筋組織の作成を目標に、人工心筋組織を作成するのに使用するコラーゲン、馬血清、鳥胎児抽出物などの条件設定を行ってきた。しかし、それだけでは至適な組織の作成が困難な可能性があるため、組織の発生に立ち返り、心筋細胞の成熟について新たな添加物の有用性についての検討も施行する予定である。 これまでの胚性幹細胞を用いた研究における様々な物質が心筋細胞の分化、成熟を促進するとの報告を参考に、コラーゲンゲル内での三次元培養という人工心筋組織を作成する条件でも同様の効果が認められるかどうかについての検討を行う。
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