研究概要 |
血管型エーラス・ダンロス症候群(血管型EDS,エーラス・ダンロス症候群IV型)は、血管や管腔臓器に特異的に発現するIII型コラーゲン(COL3A1)の片方のアレルの遺伝子変異で発症する.本症候群は血管破裂、消化管破裂、子宮破裂を合併し、時に突然死を呈する常染色体優性遺伝病であり,他のエーラス・ダンロス症候群と異なる疾患群と考えられている。現在のところ、根本的な治療法はなく対症療法が主となっている.欧米では家族歴のある動脈瘤の鑑別疾患としてマルファン症候群と対比されている.本邦では最近になり救急領域での報告が散見され、診断されていない例も多く欧米に比べ頻度が高いことが予想される。さらに,血管型EDSはマルファン症候群に比して血管脆弱性が強く,血管へのアプローチが難しく手術による対応が難しい. これまでに,研究者は日本における血管型エーラス・ダンロス症候群患者の遺伝子解析を行い,COL3A1遺伝子の変異部位を同定してきた(Watanabe et al.2007).2/3はトリプルヘリックス領域にみられる3アミノ酸ごとに繰り返すグリシンをコードする一塩基が変わり,別のアミノ酸に置換するミスセンス変異、残り1/3はエクソン境界にあるイントロン部位の変異によりスプライシング異常を来たし,両者は変異産物が正常産物の機能を阻害するdominant negative効果により疾患を来すことが予測されている.さまざまな遺伝子変異型により治療アプローチも異なると推定され,遺伝子変異型により分類化した血管型エーラス・ダンロス症候群の治療手法の開発について検討を行う. 平成22年度は遺伝子変異を迅速に解析診断出来る手法を開発した(Naing BT et al.2011)そのうち,プライシング異常を来す血管型EDSについて変異部位に基づいた変異遺伝子産物測定法をRNAレベルで解析できるシステムを構築した.
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