研究課題
臓器移植改正法が実施されて以来、脳死ドナー数は増加し各臓器における脳死移植数は増加したが、移植待機患者を充足するには至らず、ドナー不足は深刻な現実問題である。ドナー不足を解決する一法として再生医療技術に着目し、単離・培養した肺再生に関わる肺幹細胞(Brochoalveolar stem cell ; BASC)・II型肺胞上皮細胞(type II alveolar epithelial cell ; AT-II)を死体肺やマージナルな症例に投与することでを傷害肺を再生させ、生着・機能させることを研究の骨子とし、移植医療に貢献することを主たる目的する。本年度はBASC/AT-IIの単離培養技術の確立を行い、ドナー肺に投与する前に左肺全摘後の右肺に単離したAT-IIを経気管移入を行い、肺胞への生着を確認することを行った。1.単離技術はRichard RJらが報告した方法をmodifyした形で行い、SP-Cによる蛍光染色や、電子顕微鏡によるAT-IIの特徴から単離細胞の約85%がBASC/AT-IIであることを確認した。2.単離培養後の細胞は細胞総数としては減少するものの、細胞の種類が一様になってきていること、即ち前駆細胞としての機能を有するAT-IIからAT-Iに分化している可能性をFACSで確認した。3.雄ラットをドナー、雌ラットをレシピエントとするsex-mismatch modelを作成し、Y染色体を認識するプローブを使用したFISHおよびリアルタイムPCRで移入細胞の生着を確認したところ、左肺全摘後に移入した細胞は生着したが、開胸操作のみのラットに移入した細胞は生着しなかった。4.また左肺全摘後に過膨張を呈していた肺胞は、移入後には肺胞密度が増加し、新たな肺胞の新生が示唆された。本基礎実験を元に、傷害肺モデルにおけるドナー肺の再生の可能性を次年度、次々年度に追求する。
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