研究概要 |
ヒト肺癌標本を用いた、肺気腫の合併が肺癌の進展に関与する因子を特定するための実験 本年度はヒト肺癌標本(過去に当院で手術を受けた肺癌患者から)を用いて、肺気腫と癌の臨床的悪性度との関係を分子レベルで検討することを目的に研究を行った。 過去に当院で臨床病期I期の非小細胞肺癌にて手術を受けた患者から、気腫肺を有する症例30例と気腫肺を有しなし症例30例の手術標本(パラフィンブロック)を選定した。選定した標本から組織切片を作成した。 細胞外基質分解酵素の発現を評価するために抗MMP-2抗体、MMP-9抗体を用いて免疫染色を行った。血管新生因子の発現を評価するために抗VEGF抗体、新生血管密度を評価するために抗vWF,CD34,CD105抗体を用いて免疫染色を行った。細胞の増殖指数を評価するために抗PCNA(Ki67)抗体を用いて免疫染色を行った。細胞のアポトーシス指数としてTUNEL法を用いて測定した。現在染色されたこれらの標本に対して定量評価を行っている。 マウス肺気腫モデルの作成 エラスターゼの毒性試験一至適容量・濃度試験を行った。その結果、エラスターゼは20μg/50μL/bodyが至適容量・濃度であることが分かった。その後、実際にマウス気管内にエラスターゼを投与し、肺気腫モデルを作成した。エラスターゼ処理後パルスオキシメーターで肺機能を評価しつつ、2週後、4週後、8週後の経時的にマウスを犠牲死させマウス肺標本を採取した。生理食塩水のみを投与したものをコントロールとして、HE染色ならびにEVG染色により肺胞構造組織破壊を観察し肺気腫病変が確立する時期を特定した結果、エラスターゼ投与後3-4週目が妥当であることが分かった。
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