本年度は左肺切除術により、骨髄由来幹細胞が動員されるか否か、また動員された骨髄由来幹細胞が創部に集積し創傷治癒に関与するか否かについて明らかにすることを目的とし、動物モデルを用いた検証を行った。 はじめに、本研究で用いる左肺切除術の手術侵襲の程度を評価するためにELISA法を用いて炎症性サイトカインである血中IL-6濃度を測定した。その結果、開胸していない対照群と比較して、術後6時間で有意に血中IL-6濃度が上昇した(p<0.05)。また、ケモカインであるSDF-1の血中濃度もELISA法で測定したところ、術後24時間後で有意に上昇した(p<0.05)。続いて、左肺切除による骨髄由来幹細胞の動員を評価するために、術後24時間での末梢血中のCD34陽性細胞及びc-kit陽性細胞をフローサイトメトリーで測定した。その結果、CD34陽性細胞およびc-kit陽性細胞は術後24時間に増加した(p<0.05)。以上の結果から、左肺切除術という手術侵襲に伴い、骨髄由来幹細胞が末梢血中に動員されることが示された。 次に、左肺切除術によって動員された骨髄由来幹細胞が創傷治癒に及ぼす影響について検討した。GFP骨髄キメラマウスに対して左肺切除術を行った直後に、背部を円形皮膚切除し創傷治癒モデルを作製した。術後隔日で創面積及び創直径を測定した。その結果、左肺切除術を行った手術群は対照群と比較して、術後3日目の時点で、創面積及び創距離の縮小を認めた(p<0.05)。以上より、左肺切除術が創傷治癒に関与することが示された。
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