マウス肺切除モデルでのヘモグロビン小胞体輸液の効果、マウス及びラット摘出肺潅流回路の作製、ブタ肺移植モデルでのデータの収集を行った。 1.マウス肺切除モデル:頚動脈にカニュレーションし、循環血液量の40%交換輸液した後、左肺切除を行う。ヘモグロビン小胞体投与群、リンゲル液投与群、アルブミン投与群、保存血液投与群とで術後の生存率、回復過程を比較した。ヘモグロビン小胞体群とマウス保存血液群では100%のマウスが長期生存したが、リンゲル液群では全例が24時間以内に死亡し、アルブミン群では50%の生存率であった。体重変化、摂食量、自発運動量、血中炎症性サイトカイン濃度はヘモグロビン小胞体群と保存血液群とで差を認めなかった。またヘモグロビン小胞体が補足されるため、術後に脾腫を認めるが、14日目には改善した。アルブミン群では肝臓および腎臓で低酸素誘導因子HIF‐1αの発現を認めたが、ヘモグロビン小胞体とマウス保存血液群では発現が抑制されていた。肺切除という外科的侵襲下、低肺機能のマウス体内で有効に機能し、術後の回復に影響を与えないことが確認できた。 2.摘出肺還流回路の作製:マウス或いはラット摘出肺をヘモグロビン小胞体で還流する回路を作製した。肺を摘出し、肺動脈にカニュレーションし、ヘモグロビン小胞体を低圧で持続注入する。同時に気管内挿管して人工呼吸器に接続して肺を換気する。肺静脈から潅流されたヘモグロビン小胞体が持続的に流出することを確認した。また肉眼的に肺外観に大きな変化を生じなかった。病理学的にも評価を行った。 3.ブタ肺移植モデル:全身麻酔下にドナー左肺を移植するモデルを作成した。右大腿動脈カテーテル、Swan-Ganzカテーテル、左房カテーテルを挿入し、肺動脈圧、肺血管抵抗、動脈血酸素分圧等を測定し、グラフト肺の機能を評価する手技を確立し、リンゲル液投与群でのデータ収集を継続した。
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