研究課題/領域番号 |
22591577
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
今井 英明 東京大学, 医学部附属病院, 特任講師 (70359587)
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研究分担者 |
斉藤 延人 東京大学, 医学部附属病院, 教授 (60262002)
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キーワード | 虚血細胞死 / ラット白質梗塞モデル / 細胞移植 / 軸索再生 / 質量顕微鏡 / 病態解析 / 血管内皮細胞 |
研究概要 |
(1)白質梗塞(ラット白質脳梗塞)モデル作成と多角的病態評価 成獣ラット(12週齢)の内包にエンドセリン1μg/μ1を定位的に注入して、選択的白質梗塞モデルを作成した。ターゲットポイントの検証を行い最適条件をみつけた。内包選択的にエンドセリン誘発白質虚血ラットモデルが作成できた。行動解析では明らかな運動麻痺等の症状は認めなかった。組織学的に、軸索・ミエリンの障害を確認した。さらに、病態解析を目的に、質量顕微鏡法により、この部位におけるリン脂質の分子動態の解析を開始した。慢性期においては、不飽和脂肪酸からなるPosbhatidylcholine(PC)の上昇を認めた。 (2)GFPラットからの移植細胞調整(神経幹細胞と血管内皮細胞) 神経幹細胞:GFPラット側脳質壁から細胞を採取し、神経栄養因子を加えた無血清培地で浮遊培養したところニューロン、アストロサイト、シュワン細胞へ分化傾向を示す自己増殖能をもつ神経細胞塊(neurosphere)であることが確認できた。 脳血管内皮細胞:GFPラット大脳からPercoll密度勾配法によって微小血管およびその内皮細胞を分離し、得られたフラクションをFetal bovine serum、Epidermal growth factor存在下で培養すると形態組織学的に血管内皮細胞であることを確認した。 (3)虚血細胞死における超急性期の質量顕微鏡による分子イメージング 神経細胞死の機序を明らかにする目的で、ラット局所脳虚血モデルを用いて脂質変化を、質量顕微鏡にて網羅的に解析する。虚血巣中心である大脳基底核において、虚血15分後では形態学的には変化を認めていないが、質量顕微鏡では、虚血領域特異的に、Posphatidylcholine(PC)の変化をみとめた。ある脂肪酸組成のPCは、上昇し、またある脂肪酸組成のPCは減少しているこおり、あるPCは変化を認めないことが判明した。虚血細胞死(壊死)の過程で、細胞膜の主要構成成分であるリン脂質PCが、脂肪酸組成により異なる局在を示したことから、リン脂質が細胞死のinitiationにおいて役割を演じている可能性が示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
エンドセリンの注入にて内包に再現性のよい障害部位を作成することができた。選択的白質障害モデルを確立し、この部位に細胞を移植することができた。 局所脳梗塞モデルを作成し、形態学的変化(細胞壊死)が生じる前に質量顕微鏡でリン脂質の動的な変化をとらえられた。
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今後の研究の推進方策 |
選択的内包障害モデルにおける細胞移植研究では、移植細胞が生き残るための環境設定が、なされていない。どのような条件が必要にして十分であるか、今後の検討課題である。 質量顕微鏡によるリン脂質の同定に関しては、現在のところPosphatidylcholine(PC)が最適化されているが、ほかのリン脂質あるいはたんぱくへの可視化をどのようにするか今後の課題である。
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