脳血管障害は死因の第3 位、患者数は第3 位を占め、その治療法の開発は急務である。2005 年より脳梗塞発症の急性期3 時間以内にt-PA 静注療法が開始されたが、脳血流の再灌流に対する神経細胞のストレス応答機構は明らかでない。我々の研究グループは、ラット中大脳動脈閉塞・再灌流モデルのPenumbra 領域の神経細胞にMKP-1(MAP kinase phosphatase-1)が誘導されることを見出し、当該研究ではその意義を解析した。 初代培養神経細胞および神経芽腫由来N1E115細胞において、低酸素/再酸素化ストレスでMKP-1のmRNAが誘導されていることを確認した。更に、神経系細胞株(N1E115 細胞)のテトラサイクリン誘導性(tet-on inducible)MKP-1 強制発現系を樹立し、MKP-1が低酸素/再酸素化ストレス時において神経細胞に及ぼす影響を解析した。その結果、MKP-1の強制発現時には、ストレスキナーゼJNKの活性化(リン酸化)を抑制し、低酸素/再酸素化ストレスによる神経細胞死を抑制することを確認した。その神経保護作用のメカニズムの一つとして、低酸素/再酸素化ストレス時に誘導される細胞死関連因子のmRNAの発現を抑制することを見出した。また、siRNAを用いてMKP-1の発現をノックダウンしたところ、低酸素/再酸素化ストレスにおいて細胞死が増幅されることを確認した。以上の結果より、MKP-1を誘導することで、脳梗塞急性期の神経細胞死が抑制され得る可能性が示唆された。
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