強力な血管拡張剤である塩酸ニトロプルシド(SNP)は強力な血管拡張作用薬であり、攣縮血管を拡張させることは明白であるが、正常血管がより顕著に拡張し、盗血現象が発生することで脳虚血が増悪する危険性がある。従って、より低濃度での注入が望ましい。そこで、前年度の1/10の濃度である0.1mg、0.2mgでの注入を行い、EPA-Na(エイコサペンタエ酸)+SNPもしくはFRS(エダラボン)+SNPのいずれの組み合わせが脳血管攣縮治療法として効果があるかを検討した。さらにEPA-Na+FRSの組み合わせでも検討を行った。基本的な動物モデルの作製、研究組織と方法は平成23年度と同様である。 結果として、濃度を下げても(0.1mg、0.2mgでの注入)SNPのみが脳血管攣縮予防法として、特に有望であることが判明した。EPA-Na+SNP、FRS+SNPもしくはEPA-Na+FRSの組み合わせでは脳血管攣縮治療法としては、単独注入と比較して有意な効果を認めなかった。 くも膜下出血後の脳血管攣縮治療薬が血管に到達するためには、まず、血栓溶解剤でくも膜下腔の血腫を溶解させることが必要であり、脳血管攣縮治療法としては、今のところ強力な血管拡張剤である塩酸ニトロプルシドが最有力であることが確認された。 未だ、症候性脳血管攣縮の発生率が10~20%ほどであり、大槽内からマイクロカテーテルを使用してクモ膜下腔内の血腫を溶解してから、血管拡張薬を注入する方法は極めて理にかなった方法と考えられ、臨床治験管理センターを通じて臨床応用を目指す所存である。
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