SDラットの左内頚動脈を血管内よりナイロン糸で穿通することにより、くも膜下出血(SAH)モデルを作成した。まず、SAH後の脳における内因性オステオポンチン(OPN)発現の経時的変化を調べた。SAHラットの神経症状や体重減少は、SAH後2日後に最も悪化し、その後、改善し始めたが、脳の内因性OPNの発現はSAH後3日後にピークを示した。また、免疫染色で、反応性グリアや新生血管の内皮細胞でOPNが誘導されることが明らかになった。そこで、SAH作成24時間前に、SAH群、Sham群のラットにそれぞれOPN siRNA、negative control siRNAおよびvehicleを定位的に左側脳室内に投与し、内因性OPNの発現を阻害した。その結果、SAHの出血量は不変であったにも関わらず、SAH後3日後の神経症状、血液脳関門障害や脳浮腫は有意に増悪した。これらの所見より、SAH後のOPNの誘導は、SAH後脳損傷に対し保護的に作用すると考えた。また、ウエスタンブロットにより、内因性OPN誘導阻害による脳損傷増悪に、mitogen-activated proteinkinase(MAPK)phosphatase-1の活性阻害、MAPKの活性化、vascular endothelial growth factor-Aの活性化を伴うことが明らかになった。予想通りの結果が得られたことから、次年度にrecombinant OPNを脳室内に投与し、SAH後脳損傷に対し保護作用を示し、新規治療法として利用可能か、に関する検討を開始する予定である。
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