研究課題/領域番号 |
22591584
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
鈴木 秀謙 三重大学, 医学部附属病院, 講師 (90345976)
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キーワード | くも膜下出血 / オステオポンチン / マトリックス細胞蛋白 / 脳損傷 / 血液脳関門障害 |
研究概要 |
オスのSDラットを用いて平成23年度と同様に、左内頸動脈先端部を血管内より先端を尖らせた4-0ナイロン糸にて穿刺することにより、くも膜下出血モデルを作成した。本年度は外因性オステオポンチンがくも膜下出血後に生じる血液脳関門障害を防ぐか検討した。外因性オステオポンチン(0.02または0.1μg)またはvehicleを、くも膜下出血作成1時間前にくも膜下出血群、Sham群のラットにそれぞれ定位的に脳室内投与した。その結果、くも膜下出血後に生じる神経症状の悪化、血液脳関門障害(Evans blue dye extravasation)および脳浮腫(wet/dry weight method)は、外因性オステオポンチンにより用量依存性に有意に改善した。また、外因性オステオポンチンはくも膜下出血後の脳実質において、転写因子の1つであるnuclear factor-kBや蛋白質分解酵素マトリックスプロテアーゼ-9の活性化を抑制し、血液脳関門に関連する細胞外基質蛋白(ZO-1、ラミニン、コラーゲンIV)の分解を妨げた。一方、Arg-Gly-Asp(RGD)モチーフを含有するhexapeptideであるGRGDSP(RGD依存性インテグリン受容体阻害薬)を外因性オステオポンチンと同時に脳室内投与すると、オステオポンチンによるくも膜下出血後の血液脳関門障害の抑制効果は消失した。以上より、外因性オステオポンチンはRGD依存性インテグリンを介し、くも膜下出血後の血液脳関門障害を抑制することが明らかになった。これらの成果はオステオポンチンなどのマトリックス細胞蛋白がくも膜下出血後の脳損傷の病態に関与し、新規治療法を開発するための新しい分子ターゲットになる可能性をはじめて示すものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、研究を遂行しており、成果も学会や論文にて公表できた。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、オステオポンチンによるくも膜下出血後の脳保護効果の機序の解明に努める。また、オステオポンチンと同様にマトリックス細胞蛋白に属するテネイシンCがくも膜下出血後の遅発性脳障害の原因となる可能性を示唆する所見を得つつあるので、オステオポンチンとテネイシンCの相互関係についても探索する必要がある。具体的には、次年度は神経細胞のアポトーシスに対するオステオポンチンやテネイシンCの作用に注目し、遅発性脳障害の古典的な原因病態である脳血管攣縮との関連を含め、研究を進める予定である。
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