研究課題/領域番号 |
22591586
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
近藤 威 神戸大学, 医学研究科, 医学研究員 (50273769)
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研究分担者 |
甲村 英二 神戸大学, 医学研究科, 教授 (30225388)
篠山 隆司 神戸大学, 医学部附属病院, 講師 (10379399)
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キーワード | 放射線治療法 / 微小平板ビーム / 高エネルギーX線 / モンテカルロコード / ガフクロミックフィルム / 顕微分光 / グリオーマ |
研究概要 |
実験的に100Gy以上の線量の平板状放射線を幅数十ミクロン程度で照射すると、照射された幅(peak領域)の領域は細胞死に陥ることが確認された。隣接する非照射領域(valley領域)は細胞死に至らず、結果として照射された脳組織の構築は保たれた。さらに、このX線を200ミクロン間隔のすだれ状(あるいは格子状)にしてラット大脳半球に照射しても脳の構築は保たれた。興味あることに、同じすだれ状の照射を脳内に移植したグリオーマ腫瘍塊に行なってみたところ、腫瘍では数日のうちに壊死が広がり、塊全体が消失することが確認された。重要なことは、この選択的腫瘍壊死が一回照射で得られることである。 組織学的には、正常脳組織では高線量が当たったpeak領域で1週間程度かかって神経細胞死が完成する。一方、毛細血管はmicrobeamで分断されても血流低下を来すまでには至らない。また、慢性期になっても反応性の血管内皮増殖は無視でき、閉塞性機転を示すこともない。細動脈レベルや頸動脈でも高線量microbeam照射で血管内皮の反応は乏しい。一方、腫瘍組織内では、照射前の状態で血管密度が低く、低酸素状態である。腫瘍内血管がmicrobeamで分断されると微小出血を伴い血流不全が生じる。この結果、腫瘍組織では、valley領域を含めた全体に劇的な変化が生じ、大脳半球に腫瘍が存在したと思われるだけの腔を残して腫瘍細胞は壊死した。低酸素プローブを用いた組織学的検討で、壊死性変化に先立って低酸素状態が広範囲に出現することが確認された。 高線量を高精度に標的腫瘍に照射するというアプローチは境界が鮮明な腫瘍に適したアプローチであるが、浸潤性の悪性脳腫瘍に対しては限界がある。微小環境における低酸素状態を標的とするマイクロ単位の高線量空間的分割照射は、放射線利用の新たな領域を開く可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
学会発表および英文論文を完成させた。
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今後の研究の推進方策 |
放射線耐性腫瘍株での治療効果の差を今後検討する予定であり、新たな研究に着手する準備段階である。
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