研究課題/領域番号 |
22591589
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
茂木 正樹 愛媛大学, 大学院・医学系研究科, 講師 (20363236)
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研究分担者 |
堀内 正嗣 愛媛大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (40150338)
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キーワード | 脳卒中 / 認知機能障害 / 骨髄細胞 / レニン・アンジオテンシン系 / 血管細胞 / 神経保護効果 / 脳血流改善効果 / 抗炎症効果 |
研究概要 |
脳におけるレニン・アンジオテンシン(RA)系の果たす役割について、主にAT2受容体シグナルの脳卒中ならびに認知機能障害に与える影響を中心に前年に引き続き検討した。また、骨髄細胞への影響については血液系細胞の分化や老化などに着目して検討した。 骨髄細胞のキメラマウスを用いることによりAT2受容体の脳血管障害に与える血液細胞の影響について検討した昨年からの研究成果は、抗炎症効果などより詳しいメカニズムの検討を追加することで、Hypertension誌(IF:6.908)に論文が採択された。 次に、直接的AT2受容体刺激薬であるCompound 21を用いた認知機能への効果については、野生型マウスにおける学習能の向上作用だけでなく、アミロイドβを脳室内に投与するアルツハイマー病モデルマウスにおいても、Compound 21の前投与により認知機能低下の抑制作用が認められ、Journal of Cerebral Blood Flow & Metabolism誌(IF:4.522)に論文が採択された。 次に、RA系が炎症細胞誘導に与えるメカニズムについて、Th17細胞から分泌されるIL-17の産生とIL-17が糖代謝に与える作用について検討を行った。RA系の亢進によりIL-17の産生が増強し糖代謝への悪化が起こること、RA系の抑制によりIL-17を介して糖代謝が一部改善することが示された。こうしたことからRA系が血液細胞分化に関与することが示唆された。以上の成果はHypertension誌に採択された。 最後に、AT2受容体の相互関連タンパクであるATIPに着目して血管平滑筋細胞の老化に与える影響について検討した。ATIPが過剰発現した平滑筋細胞では血管老化が抑制されることが示され、AT2受容体シグナルが血管の老化を抑制する働きのメカニズムがさらに解明された。 以上の結果から、RA系、特にAT2受容体の働きは血液細胞の分化において重要な役割を果たしており、骨髄ストローマ細胞に対しても分化の程度や質に違いを来している可能性が示唆される。今後は骨髄細胞に着目した、AT2受容体シグナルの脳保護作用に及ぼすメカニズムについてさらに検討をする予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
血液細胞におけるRA系の脳神経疾患保護効果についての検討は様々な方面から進められているが、骨髄ストローマ細胞に直接関連した検討がまだ少ない。神経保護効果という点で骨髄ストローマ細胞に注目しているが、血液細胞系全般の分化・老化に着目した幅広い検討から得られた結果を骨髄ストローマ細胞の質の変化のメカニズム解明に繋げ、さらに研究を進めて新規治療法に繋がる研究を進めていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
当初、骨髄ストローマ細胞を用いる実験に際し、長期(慢性)的な効果の検討を考慮したが、マウスでの検討の場合、大きな脳梗塞を作成しても梗塞巣の吸収等により1ヶ月程度で梗塞巣が殆ど消失してしまうことが多く、また大きな脳梗塞により神経障害を来したマウスでは長期の生存が難しいことから、慢性期の治療効果を正確に把握・評価することが難しい。現在MRIなどを用いて脳梗塞後1週間の脳障害度の経時的変化を追っている。また認知機能に関しては、ヒトに近い慢性進行型の認知機能障害モデルの作成なども問題点に挙げられる。また、神経変性疾患モデルマウスに関しては自由に入手が難しいマウスもあり、こうしたマウスモデルに関する問題点につき、至適モデルの作成・入手に現在力を入れている。
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