研究概要 |
近年の研究から、正常個体の免疫系には自己反応性T細胞を抑制する活性をもった「制御性T細胞」とよばれるT細胞のサブセットが存在し、病的免疫応答を制御していることが明らかになってきた。そして自己免疫疾患の発生を抑制する機能を持ったT細胞の単離の試みがなされ、1995年にCD25を発現するCD4+T細胞がこの機能を持つことが明らかにされた(J Immunol 155:1151-1164,1995)。また転写因子FoxP3が制御性T細胞の特異的分子マーカーであり、そのマスター遺伝子として機能するということが明らかとなった(Science 299:1057-1061,2003)。またその後の研究により制御性T細胞は自己免疫のみならず、アレルギー、炎症、移植免疫、感染免疫、腫瘍免疫といったほとんどあらゆる種類の免疫反応を制御する能力を持つことが示され、免疫系における恒常性の維持に必須の役割を果たしていることが分かってきた。 脳虚血の病態機構として各種炎症性サイトカインを含む免疫系の重要性が認識されるようになっている(Curr Opin Neurol. 20:334-42,2007)。即ち、脳虚血も炎症の1つであり、脳虚血により引き起こされる炎症反応が、脳虚血の病態機構に重要な影響を及ぼすと考えられるようになってきた。そこで本研究では「制御性T細胞」が脳虚血に及ぼす影響を検討した。まず脳虚血後の「制御性T細胞」の比率を検討した所、脳虚血後3時間目には有意に制御性T細胞比率が減少し、同時に脾臓ではIL-6やMCP-1といった炎症性のサイトカインが上昇していることが明らかとなった。現在制御性T細胞の脳虚血に及ぼす分子機構を解明するため、初代培養神経細胞を用いて検討を行っている。
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