研究概要 |
本研究の目的は、霊長類虚血性脳損傷モデルを用い,PGD2合成阻害剤を投与することにより,脳内に大量に存在する炎症メディエーターであるPGD2を制御し,脳虚血後の二次性脳損傷を軽減させる新しい治療法を開発することである. 本年度はPGD2合成阻害剤のブラインド投与下に,カニクイザルを用いた脳梗塞モデル作成,MRI画像撮像,行動観察,神経機能記録,高次脳機能(空間記憶)測定を行った。モデルの作成は脳血管内手術用マイクロカテーテルを中大脳動脈に留置して血流遮断することにより作成し(3時間),カテーテルを引き抜くことにより再灌流(血流再開)した.これらの実験は医薬基盤研究所霊長類医科学センターの施設を用いて行われたが,予定動物実験は全て終了した. モデルの再現性はあったが,MRI上,虚血(脳梗塞)の広がりにばらつきがあり,MRIで急性期虚血体積が5000mm^3を上回った場合,脳ヘルニアを来して死亡した.キーオープンして薬剤投与群とコントロール群を比較した.観察した1ヶ月間については副作用を疑わせるような異常所見はなく,薬剤の安全性は確認された.血液検査の結果については解析中である.MRI画像データを検討したところ,再潅流後亜急性期(day3)における脳浮腫軽減が薬剤投与群の一部のケースで見られた.今後はこれらのデータや高次脳機能検査のデータを統計学的に処理し,治療効果(梗塞体積の減少,耐虚血体積の増加,高次脳機能の改善など)を確認するとともに組織学的検討を行う予定である.
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