今回の実験目的達成のために使用するGFAP-GFPマウスを用いる目的は、アストロサイト自体の形態的変化が実際に起こるかどうかを負荷モデルを用いて確認することと、アストロサイトが機能しているかどうかを可視化する方法としてカルシウム感受性蛍光色素を用いてアストロサイトのCa2+の変動を捉えそれに始まる神経情報伝達物質の放出に伴った血管径の変化・血管透過性の変化・脳血流の変化を観察することである。R22年度は、そういった結果を正確に得るための安定した実験系の確立が主体となった。もっとも重要となる2光子蛍光顕微鏡システムの操作方法を体得し、安全に故障なく使用できるようにし、得られたデータをOlimpus FV1O-ASWを用いて3次元画像解析を含め、ブルーレイDVDシステムに保存再生して実験終了後に時間をかけて解析できるようにした。GFAP-GFPマウスを用いて、使用するレーザー光の波長を決定し、最適なFilter blockを決定した。血管径は、FITCなどの蛍光色素も検討したが、Qdotを用いることがより正確な解析のために有用と考えられた。2光子顕微鏡システムによる観察中の血圧、体温の管理システムを確立し、全身麻酔薬の量を決定した。蛍光染色した白血球や血小板動態の観察評価も試みたが、血流動態の変化の観察には2光子顕微鏡は適さず、アストロサイトと血管径の観察に重点をおくこととした。GFAP-GFPアストロサイトは、マウスではよく言われるように脳表面近くにも多く存在し、脳表近くの方が画質も良好であるため、当面は、50μmまでの深さでの観察を行い、脳虚血、くも膜下出血などの負荷を加えて観察を進めることが妥当であると考えられた。
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