脳血管内治療は開頭手術を行わずにカテーテルを用いた遠隔操作による治療であるため低侵襲の治療法として急速に普及し、脳血管障害の治療では重要な役割を果たしている。但し微細な機材を使用し非常に繊細な操作を必要とするため、治療のリスクも低くなく、高度な治療技術を習得して安全な医療サービスを提供することが求められているにも関わらず、日常臨床では治療手技の習得は困難な状況におかれ、安全かつ有効な血管内治療トレーニング法の開発が求められている。動物を用いた治療訓練モデルが導入され、ブタの頚動脈に顕微鏡下に動脈瘤を作成して訓練に用いてきたが、準備に要する時間と労力が相当な負担となり、訓練モデルとして現実的ではないことが判明した。そこで、ブタの頸動脈にシリコン製の血管モデルを結合するhybridなvirtual脳循環モデルを作成し、血管内治療が可能なトレーニングモデルを作成した。このモデルでは大腿動脈からシースを挿入し、X線透視下にガイディングカテーテルを総頸動脈に進め、更にマイクロカテーテルをシリコン血管モデルに誘導する血管内治療の基本操作がすべて実践することができた。特に脳動脈瘤モデルではコイル塞栓術は実際の治療とほぼ同等の条件で技術訓練が可能となった。また同じコイルを何度も出し入れすることができ、異なったコイルを入れ変えることでコイルの特性を実感することができるという点では実際の治療よりも訓練の点では優れていると言える。さらに訓練中の放射線照射時間だけでなく、検者および被検者の放射線被曝線量を実際に測定することにより、技術習得だけでなく、放射線被曝軽減にも効果があることが判明した。血管内治療の治療成績向上だけでなく、医療安全の点からも本システムは有用であると考えられた。本システムの有効性が強く示唆されたが、改善すべき問題もあり、さらなる研究開発が必要である。
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