研究課題/領域番号 |
22591606
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
岩立 康男 千葉大学, 大学院・医学研究院, 准教授 (70272309)
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キーワード | グリオーマ / ウイルス療法 / 腫瘍免疫 / インターフェロン / 遺伝子組換え / センダイウイルス / Flt3-L |
研究概要 |
脳は免疫学的寛容の場として知られ、抗原提示が不十分であると同時に、免疫担当細胞の集積を得づらい組織である。我々は、センダイウイルスベクターが抗原提示細胞に対して強力なアジュバントとして作用することを証明してきた。今回、ウイルスタンパクのうち、出芽に必要なMタンパクを欠失させ(SeV/△M)、細胞融合に必要なFタンパクをグリオーマ細胞において高発現が確認されているurokinase-type plasminogen activator(uPA)によって開裂し活性型となるように改変した新規の腫瘍融解ウイルスを作製した。このウイルスベクターにインターフェロンβ(IFN-β)遺伝子を搭載することにより(SeV/△M-IFNβ)、遺伝子導入効率を損なうことなく樹状細胞を強力に活性化することを証明した。これを9L-gliosarcoma細胞によるラット脳腫瘍モデルの脳腫瘍局所に投与すると100%の治癒が得られた。また、Standard^<51>Crrelease assayにより、腫瘍特異的細胞障害性Tリンパ球が通常の皮下ワクチン療法よりも強力に誘導されていることが示された。免疫学的寛容の場である脳においても、センダイウイルスを活用することにより強力な抗腫瘍免疫が誘導されることが示された。本年度は、その免疫機構活性化の証明とその分子機構を知るための実験を行った。治療後2週間目に脳を摘出し、CD8 T cell、CD4T cell、CDb+マクロファージの浸潤を免疫組織化学により検討したところ、これらの細胞の著名な浸潤増加を認めた。また、樹状細胞の活性化を促すFlt3 ligandの発現増強も認められ、これが免疫寛容状態の打破に寄与していると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度の研究目的を達成した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、治療成績のさらなる向上を目指し、センダイウイルスのdelivery法を、従来の定位的注入の他、リポソームを利用した方法の応用を目指す。
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