研究概要 |
成体脳の海馬歯状回顆粒細胞下層と脳室下帯に存在する神経幹細胞からの新生神経細胞に、脂肪酸結合蛋白(FABP)が強く発現していることから、この蛋白が神経新生に関与し、転写因子であるPax6がFABPの調節に重要な役割を果たしている事が報告されている。成体脊髄においても脳と同様に神経新生が起きており、脊髄損傷後にそれが亢進することが示されていることから、本研究では、成体の脊髄損傷後の神経新生におけるFABPの機能とその制御因子について検討することを目的とする。 平成23年度は、閉鎖圧20g・閉鎖時間30秒の条件で、脊髄損傷モデルを3系統のマウス(野生型、脳型FABP(B-FABP)及び上皮型EABP(E-FABP)ノックアウト)にて作成した。 1.機能評価:脊髄損傷後4,7,14,21,28日目に、下肢の運動機能をBasso Mouse Scale(BMS)を用いて評価した(n=10)。その結果、野生型マウスが、他の2系統のノックアウトマウスより運動機能の回復度が有意に高いことが示された。 2.多重免疫染色:脊髄損傷後2-4日目に、5-bromo-2-deoxyuridine-monophosphate(BrdU)を腹腔内投与し、脊髄損傷後4,7,14,21,28日目の各ポイント(n=5)で、3系統の脊髄損傷マウスを灌流固定し、損傷部位の脊髄を採取し薄切切片を作成した。来年度、多重免疫染色法にてBrdUを取り込んだ細胞の分化を観察する予定である。 3.分子生物学的解析:脊髄損傷前、損傷後3,7,10日目の各ポイント(n=5)で、3系統の脊髄損傷マウスを断頭し、損傷部位の脊髄を摘出した。来年度は、Western blotにより損傷部位におけるEABPおよびPax6の発現を定量的に調べる予定である。
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