研究概要 |
マイクロRNAは腫瘍形成、悪性化に関与していることが報告されており、グリオーマにおいてもマイクロRNAのさまざまな異常が報告されている。悪性グリオーマにおけるマイクロRNAの発現異常を、マイクロアレイ解析にて解析したところ、miR-10b, miR-21, miR-183, miR-92b, miR-106bで発現が亢進していた。miR-183の機能を解析するため、microRNAのデータベースでターゲットの候補を検討したところ、IDH2(isocitrate dehydrogenase 2)があったため、miR-183 mimicをグリオーマ培養細胞に導入してIDH2 mRNA量をリアルタイムPCRで計測した。miR-183 mimicを導入したグリオーマ細胞は著明に(50%以下に)IDH2 mRNA量の低下をみとめた。また、iR-183 inhibitorを導入するとIDH2 mRNA量の増加を認めた。同様の結果はIDH2蛋白発現でも認められた。ルシフェラーゼアッセイを行うと、miR-183はIDH2 3'UTRの相補部分と直接結合してIDH抑制に関与していることが判明した。また、miR-183を導入するとHIF-1aの発現が亢進していることが確認できた。多数のグリオーマサンプルを用いてmiR-183の発現量を検討したところ、腫瘍周囲脳に比べてグリオーマ腫瘍組織ではmiR-183の発現が亢進しており、逆にIDH2の発現量は低下していた。また、HIF-1aの発現量は亢進していた。以上より、miR-183はグリオーマ組織では発現が亢進しており、IDH2の発現を抑制し、さらにHIF-1aの発現を亢進させている可能性が示唆され、治療のターゲットとなる可能性が示唆された。
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