研究課題
基盤研究(C)
近年、クエン酸代謝関連酵素であるイソクエン酸脱水素酵素(I D H) の異常がグリオーマの予後に関連している可能性が報告されている。今回我々はグリオーマで発現が亢進している m ic r oR N A-183(miR-183)がIDH2の発現を制御しているかを検討し、さらに ID H 2 制御による HI F -1 αへの影響について検討した。 (対象および方法)同一患者で膠芽腫組織及び腫瘍周囲脳組織を採取して、腫瘍における ID H 2、HIF-1a のmRNA およびmiR-183 の相対的発現量をリアルタイム P C R を用いて比較検討した。また、多数のグリオーマ組織及び腫瘍周囲脳組織を用いて、腫瘍における I D H2 、HIF-1 のmRNA およびmiR-183 の相対的発現量をリアルタイム P CR を用いて比較検討した。また、グリオーマ細胞株(A172, U87MG, T98G, U251)に対して、miR-183 mimic を細胞内に導入し、IDH2 およびHIF-1αのmRNA 量および蛋白量の変化を検討した。また、ルシフェラーゼアッセイにて m iR - 18 3 とIDH2 のmRNA との直接的な関係を検討した。 (結果)同一患者の膠芽腫組織と腫瘍周囲脳組織との比較では、腫瘍において、m iR - 18 3 の発現は有意に亢進し、IDH2 mRNA 量は有意に低下し, HIF-1a mRNA 量は有意に上昇していた。miR-183 をグリオーマ細胞に導入すると、I DH 2 m RN Aの量は著明に低下し、HI F -1 a m RN A 量は有意に上昇した。88 例のグリオーマでは腫瘍周囲脳組織と比較して m iR -1 8 3発現が上昇し, ID H 2 発現は低下し, H I F- 1a 発現は上昇していた。グリオーマ細胞株へ m i R- 1 83 mimic を導入すると、導入前と比べてIDH2 のmRNA および蛋白は著明に低下した。ルシフェラーゼアッセイでは、miR-183 を導入した細胞ではIDH2 3'UT R を組み込んだものはルシフェラーゼ活性が低下し、さらに変異型 I D H2 3'UTR では変わりなかったことから、mi R -1 8 3 が直接的に I D H2 3 'U T R に作用していることが示された。また、m iR - 18 3 m i mic 導入により H IF-1αのmRNA および蛋白発現は、コントロール R N A を導入した場合と比べ共に上昇した。さらに、m i R- 1 83 を導入した細胞ではHIF-1a の下流のGLUT1, VEGF の発現が亢進していた。 (結語)悪性グリオーマでは miR-183 の発現が著明に亢進しており、mi R -1 8 3 により ID H 2 発現が抑制している可能性が示唆された。また、miR-183 によるIDH2 の低下よりHIF1a の発現が亢進している可能性が示唆され、miR-183 がグリオーマの予後規定因子となりうる可能性が示唆された。
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