悪性グリオーマ幹細胞のニッチがどこにあるかを探索し、そこからどのように増殖・浸潤・血管新生がおこっているかというグリオーマの本質的な病態を解明する目的で、浸潤増殖性悪性グリオーマ動物モデルを用いて研究を行った。 実験には、動物脳内で浸潤性の増殖と血管新生を示すオリジナルの培養細胞と動物モデルを用いた。まず、ラット脳内で浸潤性増殖を示すイヌ悪性グリオーマ株J3T-1に、lipofection法によりGFP遺伝子を導入した。導入細胞はまず培養条件下でselectionをかけ、その後、単クローンをいくつか選択し、マウス脳内に移植し、腫瘍形成能がある細胞株を実験に使用した。 組織学的マーカーを持つ腫瘍モデルを用いて、組織学的検討を行なった。さきに作成したGFP定常発現J3T-1株をラット脳内に移植し、浸潤増殖性悪性グリオーマ動物モデルを作成した。この腫瘍の摘出標本を、蛍光顕微鏡を用いて組織学的に観察し、増殖、浸潤、血管新生について検討したところ、グリオーマ細胞は、新生血管の周囲に付着し、そこで増殖しながら、血管壁に沿って浸潤していることが判明した。したがって、グリオーマ幹細胞のニッチは解剖学的に新生血管の周囲に存在すると考えられた。さらに、増殖速度、血管新生の程度、浸潤速度などについて定量的な解析を行った。
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