研究課題/領域番号 |
22591615
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
牧野 敬史 熊本大学, 医学部附属病院, 講師 (90381011)
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研究分担者 |
倉津 純一 熊本大学, 大学院・生命科学研究部, 教授 (20145296)
中村 英夫 熊本大学, 医学部附属病院, 講師 (30359963)
秀 拓一郎 熊本大学, 医学部附属病院, 助教 (40421820)
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キーワード | 悪性リンパ腫 / 中枢神経 / fatty acid synthase / エネルギー代謝 / 悪性腫瘍 / glucose transporter 1 |
研究概要 |
本研究では脳原発悪性リンパ腫の病態を解明し、既存の治療に対する耐性の克服、さらに病態解明に基づいた新規治療法の開発により、治療成績および治療後のQOL改善を目的としている。 悪性腫瘍では、細胞内の解糖系や脂質合成などの代謝が亢進し、増殖に必要なエネルギーを産生している。よってそれらの代謝に関連する分子を制御することは、有効な治療手段になり得ると考えられる。リンパ腫においても、glucose transporter 1(Glut1)の発現増加によりグルコースの取り込みが亢進し、糖代謝は活性化している。さらに近年、脂肪酸合成に関与するfatty acid synthase (FAS)の発現が亢進していることも報告され、治療標的分子として注目されている。これらの代謝関連分子に着目し、発現解析を行った。生検術にて組織診断を確認した脳内リンパ腫において、Glut 1およびFASの発現を検討したところ、FASの発現は70.3%に認め、Glut1は44.4%に発現していた。この結果は、日本脳腫瘍学会にて報告した。 さらにFASの発現を、膠芽腫、髄膜腫でも検討したところ、膠芽腫では67.7%に発現していた。更に髄膜腫では、悪性髄膜腫(grade IIおよびIII)では62.9%と、良性髄膜腫(grade I)の29.8%に対して優位に高発現していた(p<0.001)。良性髄膜腫の中でも、細胞増殖の指標であるMIB-1が10%を超えるものや周囲の骨、筋肉に浸潤しているものには、発現がみられた。これらの結果より、FASは増殖、浸潤能の高い腫瘍に発現しており、悪性度の指標として用いることができ、リンパ腫も含め、悪性脳腫瘍の新たな治療標的となり得ることが示唆された。この結果は、日本脳神経外科学会学術集会および日本分子脳神経外科学会で報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
免疫不全マウスの脳内に腫瘍細胞を移植する実験において、安定したモデルの作製ができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
患者検体において、悪性リンパ腫を始め、悪性神経膠腫および悪性髄膜腫において、脂肪酸合成酵素であるfatty acid synthaseが高発現していることがわかった。このことより、fatty acid synthaseが、悪性脳腫瘍において治療標的分子となる可能性が示唆された。 (1)培養細胞株を用いて、fatty acid synthase阻害剤投与による増殖抑制および細胞死誘導効果を調べる。 (2)培養細胞株を免疫不全マウスの皮下に移植した皮下移植モデルを作製し、fatty acid synthase阻害剤を腹腔内に投与し、増殖抑制および細胞死誘導効果を調べる。
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