研究課題
悪性神経膠腫(glioma)における新規抗EGFRモノクローナル抗体であるnimotuzumab(Nimo)の治療的効果を検証するため、以下の実験を行った。1)in vitroでのnimotuzumab(Nimo)の抗腫瘍効果を評価する目的で、EGFRを高発現するヒトglioma細胞株、特にwild type(wt)EGFR及びmutant EGFR(ΔEGFR、あるいはEGFRvIII)を強制発現する細胞株の中で、良好なtumorigenicityを示すU87MG系細胞株とLNZ308系細胞株を使用した。In vitroでのこれらの細胞に対する抗腫瘍効果を、MTTアッセイならびにコロニー形成能アッセイを用いて検討した。Nimo単独、或いはNimo + temozolomide(TMZ)の併用療法とも、無治療或いはTMZ単独療法を上回る細胞傷害性効果は明確には認められなかった。2)これらの腫瘍細胞のマウス腫瘍モデルを用いて、Nimo並びにNimo + TMZ併用療法のin vivoにおける抗腫瘍効果の評価を行った。まず、皮下腫瘍モデルを用いて、マウスをvehicles(コントロール)、Nimo単独、TMZ単独、Nimo + TMZ併用の4群に分けて治療を行った。Nimo単独では腫瘍増殖抑制効果は乏しかったが、Nimo + TMZ併用療法は、有意にTMZ単独と比較し腫瘍増殖抑制効果が認められた。さらに、マウス脳腫瘍モデルを作成し、同様の4群の治療を行った。その結果、Nimo単独治療では、マウスの生存期間の延長効果は乏しかったが、Nimo + TMZ併用療法では、有意にTMZ単独治療より生存期間の延長が認められ、NimoによるTMZ治療効果への相乗効果が認められた。3)現在、in vivoで認められたNimo + TMZ併用療法の治療効果において、標的としているEGFRのリン酸化ならびに腫瘍の増殖能・細胞死の評価を行っている。4)さらに、これらの治療の後に再度増大してきた腫瘍から、培養腫瘍細胞を再確立し、それらの細胞(escapers)と元のU87.ΔEGFR細胞とにTMZ感受性の差異が出現していないかを検討している.
3: やや遅れている
本研究で使用している抗EGFRモノクローナル抗体であるNimotuzumabは、EGFRに対するaffinityが低く、それだけ直接的なEGFR阻害作用が弱いものと考えられている。In vitroでのglioma細胞に対する細胞傷害作用を明確に示すことが各種アッセイや培養条件下でもこれまでのところ困難であったことが主因である。
しかしながら、より重要であるin vivo(マウス造腫瘍モデル)において、Nimo治療は現在の悪性gliomaに対する標準治療薬であるTMZと併用することで、TMZ単独治療に比べ有意に腫瘍の増殖を抑制し、マウスの生存期間の延長効果が認められている。現在、この効果を支持する分子機構の検討を進めている。また同時に、治療後に再燃増大した腫瘍から、新たに細胞株を樹立し、本治療に対する耐性を獲得したメカニズムを解明する実験を進めている。
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