1 1p/19q欠失をもつ神経膠腫に対するneoadjuvant chemotherapyと2期的治療戦略(まず可及的摘出にて腫瘍の1p/19q欠失を確認後、化学療法で腫瘍縮小させた後の根治的再切除あるいは放射線治療)の確立:1p/19q欠失をもつ神経膠腫は治療感受性が高く、1p/19q欠失の有無は、特に化学療法反応性の予測に重要である。当施設では、組織型に関わらず1p/19q欠失の有無で治療方針を選択しており、1p/19q欠失をもつ神経膠腫初発例は、放射線を温存した化学療法先行で治療が行われている。現在までに23例が同方針で治療されており、化学療法先行中のPDは1例もない。また、化学療法で腫瘍縮小させた後の根治切除は7例で行われ、これらの症例では再発は認めていない。このように同治療方針の安全性、有用性が確認されつつある。また、現在までの治療成績は学会、講演で紹介、発表した。 2 画像所見からの術前化学療法の適応確認:MRI画像、CT画像におけるいくつの特徴的所見と1p/19q欠失の有無との関係を検討した結果、グリオーマの皮質浸潤と1p/19q欠失の相関が示唆された。化学療法反応性と相関する画像所見が確認されれば、初回術前の時点で、術前化学療法の適応が示唆されるので、治療方針の決定に極めて有用である。 3 1p/19q欠失、MGMT、IDH1の腫瘍内均質性の検討:治療方針の決定に利用する因子は、腫瘍全体で均質であることが望ましい。もし不均質であれば、たとえば生検術での標本が腫瘍全体を反映しているとは限らず、注意が必要である。22年度には、lazer capture microdissection法により、数個の腫瘍細胞からDNAを抽出、MGMT遺伝子のプロモーターのメチル化を検索する手法を確立した。
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