23年度までに、C6 cellに於けるTMZの至適濃度を決定し、その濃度の直接投与が脳実質に毒性の効果を与えないこと、ラットの皮下にC6 cellを植えTMZ投与にて腫瘍増殖の抑制が認められたことを確認した。また、脳実質内への投与速度も、0.25ul/minと決定した。 その後、C6 cellを4ulのMEM培養液に混入し(径2mm大:1x107細胞数)、移植腫瘍内にTMZを投与する事に難航した。穿刺針をラットの頭蓋骨にボンドで固定し、その針からC6 cellを注入し、3日後から留置針を用いてTMZ、生理食塩水を投与する予定であり、各ゲージに一匹ずつ飼育したにも関わらず、全部のラットで針が曲がったり、抜けてしまったため、実験が滞った。 結局、連続3日間、頭蓋骨に作成したburr holeから、投与毎に穿刺し、TMZまたは生理食塩水を投与した。投与2週間後にラットをsacrificeし、脳を取り出し、病理学的検索を行った。TMZ投与ラットでの脳腫瘍の大きさは14x9mm、生理食塩水投与の腫瘍は16x15mmと明らかに増殖に有意差を認めた。 しかし、TMZ投与ラットでも腫瘍の増大は明であり、断面積の小さな脊髄に移植した場合は、有効な治療効果が得られない可能性がある。今回、TMZ投与腫瘍にても明らかな腫瘍増大を認めた理由に、TMZが腫瘍全体に及んでいなかったことが考えられる。その原因は、ラットの生存中には腫瘍の大きさの評価が困難であり、TMZ投与量が把握できないことである。また、0.25ul/minの投与速度下で、4mm径(約32l体積)の腫瘍にTMZを行き渡らせるとしたら、128分は掛かり、さらに大きくなった腫瘍には、時間が掛り過ぎ、辺縁までTMZが行き届かなかった可能性があると検討した。現在、これの結果を踏まえて、論文投稿中である。
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