研究概要 |
平成23年度までの研究で、複数の悪性神経膠腫患者症例におけるCD133+ グリオーマ幹細胞(glioma stem cell; GSC)の濃縮および継代培養に成功した。これらのGSCを用いて、血清添加培地、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)等の成長因子やインターフェロン(IFN)等のサイトカインを添加した培地によるGSCの形態、細胞表面マーカーや免疫学的抗原性の変化を観察した。血清添加培地で培養したCD133+ GSCからは、血管内皮細胞への分化を思わせる管腔様形態を形成するような細胞群や、腫瘍細胞への分化を思わせるシート状に増殖する細胞群への分化を認めた。また、血管内皮様細胞や腫瘍様細胞に分化した細胞群をGSC用培養液で培養すると、再び球形細胞塊を形成し、GSCの自己複製能が確認された。無血清培地にVEGFを添加したものでは、GSCの明らかな形態変化は認めなかったが、血清添加培地にVEGFを添加した培地では、血管内皮様細胞の出現が顕著になった。無血清培地にIFNを添加してGSCの培養を行ったところ、細胞表面のHLA classIIの発現が顕著に増加し、マイクログリア系への分化が示唆された。また、血清添加培地によってGSCから分化した腫瘍細胞と親株GSCとの抗原性の変化に関しては、TRP2, SOX2, SOX4の発現が親株GSCで高い傾向を認めた。次にCD133+ GSCと樹状細胞との融合細胞を作成し、IL-10-siRNAおよびdouble-stranded RNAにて刺激したのち自家リンパ球との混合培養を行ったところ、CD4+ T cellを用いたELISPOTにおいてGSCに対する免疫反応の誘導が確認された。以上の結果から、GSCと樹状細胞との融合細胞を用いた免疫療法は、GSCに対する抗腫瘍免疫を誘導する治療としてその有用性の高さが示唆された。
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