申請者らは独自に開発した硬組織接着性多糖誘導体を用い、生体親和性が高く、かつ骨に対し強固に接着する生体吸収性骨セメントを創製した。 本年度はさらに優れた骨セメントの開発のためリン酸化プルランの改良も行った。リン酸化プルランにα-TCPおよび昨年度に引き続きDCPD、OCP、グラスアイオノマーなどを混和し強度の増加、硬化時間、生体吸収性を検討した。 In vitroにてリン酸化プルランの成長因子徐放特性について検討した。成長因子としては骨形成促進作用があると言われるBMP-2を用いた。方法は、BMP-2を含有させたリン酸化プルランをビーズ状に成型し、PBSバッファーに浸漬した。37℃で24時間毎にPBSバッファーを交換し、それをリン酸化プルランが完全に溶解するまで繰り返した。徐放されたBMP-2の量をELISAにて測定した。結果、回収したサンプルから検出されたBMP-2は微量であり、明らかな徐放性は確認できなかった。 また、マウスおよびラットの大腿骨へリン酸化プルランおよびBMP-2を混和したものを投与し、投与後4週間でμCTを撮影した。結果、骨形成の促進の傾向を認めたものの生食投与群との有意差は認めなかった。 今後の課題としては、最も優れた強度、硬化性、そして生体吸収性を有するリン酸化プルランの配合の追究と徐放性の確認、また適切な経過観察期間を設けた動物実験での骨形成促進の証明であり、実験系を再検討していきたい。
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