方法:腰部脊柱管狭窄症により後方除圧手術をうけた症例の黄色靱帯を用いた。年齢は56-71歳であり、男性4例、女性1例であった。摘出黄色靱帯を矢状断面で、正中よりやや外側で切開し、その矢状断面を染色した。染色方法としては、瘢痕すなわち線維化を検討する目的でMasson Trichlome(MT)およびAzan(AZ)染色を、弾性線維を検討する目的でElastica van Gieson(EVG)染色を行った。免疫染色として、type Iおよびtype IIIコラーゲン、アルファ平滑筋アクチン(SMA)の発現部位を調査した。 結果:黄色靱帯は基本のマトリックスは弾性線維であるため、EVG染色では全体が強染色される。しかしながら肥厚靱帯ではまばらに染色されない部分が目立ってくる。特に、背側ではその傾向は顕著であり、弾性線維が消失する部分が見られる。その部分をAZ染色とMT染色で確認すると、青色に強染色されるため瘢痕組織となっていることが分かる。硬膜側にも、瘢痕化は見られるが、背側に比べその範囲は少なく、ほぼ正常に近い弾性線維で占められる。いずれの検体でも背側での瘢痕形成が著しい。Fibrotic scoreでみると、硬膜側平均1.9に対し背側平均3.8と、背側に強い線維化・瘢痕形成を認めた。硬膜側ではType I&IIIを発現する部分は少なく限られている。一方背側の瘢痕部分は、一致するようにType Iコラーゲン免疫染色により陽性に染色されていた。しかしながらType IIIコラーゲンの発現は強く、Type Iコラーゲン陽性部位に加え、瘢痕形成が少ない部位にも発現しており、背側では広範囲に発現が認められた。また瘢痕層にはSMA陽性細胞もみられた。 考察とまとめ:腰部脊柱管狭窄症患者の肥厚黄色靱帯の背側部分では強い瘢痕形成を認めた。免疫染色結果から、肥厚性瘢痕と類似の病態が存在することを示している。
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