研究1:肥厚靭帯の病態として線維増殖性疾患( FPD)を提唱する報告は他に例がない。我々は、靭帯肥厚とFPDの類似性について検討した。腰部脊柱管狭窄症の後方除圧手術で摘出した黄色靱帯を矢状断面で、正中よりやや外側で切開し、その矢状断面を染色した。瘢痕すなわち線維化を検討する目的でMasson Trichlome (MT)を、弾性線維を検討する目的でElastica van Gieson (EVG)染色を行った。FPDの類似性の解析として、I型コラーゲン、III型コラーゲン、アルファ平滑筋アクチン(αSMA)の免疫染色を行った。黄色靱帯の基本マトリックスである弾性線維は肥厚靱帯ではまばらに染色されない部分が目立っていた。特に、背側ではその傾向は顕著であり、弾性線維が消失する部分が見られる。その部分はMT染色で瘢痕組織であることが分かる。硬膜側にも瘢痕化は見られるがほぼ正常に近い。免疫染色では、硬膜側ではType I&IIIコラーゲンを発現する部分は少なく限られている。一方背側では瘢痕部分に一致するようにType I コラーゲンが陽性に染色されていた。しかしながらType IIIコラーゲンの発現はさらに強く、Type Iコラーゲン陽性部位に加え、瘢痕形成が少ない部位にも発現していた。また、αSMAも背側に強く発現していた。以上より、黄色靭帯肥厚の原因として、靭帯背側における、肥厚性瘢痕や皮膚ケロイドのような線維増殖性の関与が示された。 研究2:年齢による靭帯の弾性性劣化の検討。靭帯内のもう一つのマトリクスタンパクは、1型コラーゲンである。コラーゲンのクロスリンク解析に、加齢に伴い増加するといわれる悪玉架橋のペントシジンを免疫染色で検討した。Type Iコラーゲンの多く存在する瘢痕部に一致して、ペントシジンの発現が観察された。
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