研究課題/領域番号 |
22591639
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研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
山田 宏 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (70275361)
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研究分担者 |
吉村 典子 東京大学, 大学院・医学系研究科関節疾患総合研究講座, 特任准教授 (60240355)
石元 優々 和歌山県立医科大学, 医学部, 学内助教 (20508030)
長田 圭司 和歌山県立医科大学, 医学部, 学内助教 (00527195)
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キーワード | 腰部脊柱管狭窄症 / 脊椎 / 疫学 / 有病率 / 核磁気共鳴画像法 / 地域住民コホート / 検診 |
研究概要 |
研究の具体的内容 大規模地域住民コホートにおける症候性腰部脊柱管狭窄(以下、症候性LSS)の年代別、性別有病率を明らかにした昨年度の研究に引き続き、今年度は無症候性も含めた放射線学的腰部脊柱管狭窄(以下、放射線学的LSS)の罹患率について核磁気共鳴画像を用いて調査した。対象は、検診を実施できた967名(男性319名、女性648名、平均年齢66.3歳)である。放射線学的LSSの診断は、脊柱管中心部、外側陥凹部、椎間孔部の3つの部位別に、1.なし、2.軽度、3.中等度、4.重度の4段階に定性的に分類した。結果として、脊柱管中心部(なし:1.3%、軽度:22.4%、中等度46.5%、重度:29.7%)、外側陥凹部(なし:1.6%、軽度:23.6%、中等度39.5%、重度:35.4%)、椎間孔部(なし;10.6%、軽度:50.1%、中等度32.5%、重度:6.8%)の分布を示した。結果として、男女とも参加者全体の8割以上が中等度以上の狭窄(男86.9%、女83.2%)を有していた。 本研究の意義 大規模地域住民コホートにおける放射線学的LSSの罹患率を調査した世界で最初の報告である。 本研究の重要性 昨年度調査した本コホートの症候性LSSの有病率は全体で9.3%であった。したがって、構造的な変化を伴っていても症状のない症例が相当数存在する。この事実は、腰部脊柱管狭窄症に対する短期的な治療目標を設定する場合は、症状を取り除くこと、すなわち、保存的治療を手術より優先すべきであることを意味する。また、本症に対しては画像上の狭窄が高度であっても症状がなければ予防的神経除圧という考え方は成立しがたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
最終年度に予定している追跡調査は、既に住民の同意と地域自治体の協力が得られているため、準備は問題なく整っている。 本調査の実施により、LSSの2年間の発生率、予後、それに影響する要因を明らかにすることが可能と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
LSSの自然経過を十分に理解し、それに与える因子、すなわち、年齢、性、罹病期間、臨床症状、画像上の狭窄の程度などを詳細に検討することで、個々の参加者のLSSの発生、あるいは、すでに発生しているものについては予後予測が可能となる。本研究により明らかになったLSSの危険因子を地域保健福祉の現場に還元することにより、地域住民の要介護予防にわずかでも貢献することを目標としている。
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