椎間板への直接侵襲を加えない、ラット椎間板負荷モデルを作成し、経時的に定量的に行動解析を行った。Sprague-Dawleyラットを用いて、両側L4-5椎間関節を切除した群(切除群)、椎間関節を展開したのみのSham群を作成し、処置後経時的にCatWalk XTを用いて自然歩行下での行動解析をおこなった。無処置ラットを対照群とした。処置後3週では切除群で、手術侵襲によると思われる正常歩行パターン率と歩行速度の変化量の減少がみられたが、その後回復した。処置後7週で、切除群において、歩幅、最大接地面積、最大接地光学的輝度、速度、毎秒あたりのステップ数の有意な減少がみられた。Sham群、対照群では明らかな歩行パターンに変化は認められず、各群ともに明らかな下肢の運動麻痺はなかった。前後屈側面画像を用いてX線学的検討をおこなった。処置後7週の切除群で、L4-5椎間の可動性の増大が、他の群に比して有意に認められ、椎体前方の骨棘形成も散見された。椎間のすべりは認められなかった。組織学的には、術後7週の処置群で明らかな細胞外基質産生の減少がみられ、プロテオグリカン、コラーゲン量の減少が認められた。すなわち、有意な椎間板変性が出現していた。しかしながら、Sham群、対照群では有意な変化はなかった。 CatWalk XTを用いた行動解析では、椎間関節切除処置後7週で、既に報告されている神経障害モデルと同様の明らかな歩行異常パターンが認められた。X線学的には椎間不安定性が、組織学的には明らかな椎間板変性がみられた。これらの結果は変性椎間板に起因する神経因性疼痛が発現している可能性を示唆する。今年度の目的である椎間板に直接侵襲を加えない椎間板性慢性疼痛モデルを確立した。
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