研究課題/領域番号 |
22591640
|
研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
川上 守 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (20195051)
|
キーワード | 椎間板 / 慢性疼痛 / 動物モデル / 行動解析 / 発痛機序 / 変性 / サイトカイン / 細胞外基質 |
研究概要 |
平成22年度に、ラット腰椎椎間板切除の処置後7週で歩行パターンに異常が出現することをCatWalk法にて始めて証明した。X線学的に椎間高と椎間可動性の増大がみられ、健常な椎間に比し、椎間すべりを伴わない椎間不安定性が明らかに出現していた。また、椎間不安定性があるにも関わらず、約80%の椎間に前方骨棘形成が認められた。このモデルで認められた歩行パターンの障害の一部は疼痛関連行動として報告されている。椎間板に直接侵襲を加えないこの新しいモデルでは、従来証明し得なかった疼痛が出現していることが明らかとなった。平成23年度はこの慢性疼痛モデルを用いて、その発痛機序について、組織学的、免疫組織学的、分子生物学的に検討した。椎間関節切除高位の椎間板は椎間高が増大し、プロテオグリカン、1型コラーゲンの減少がみられた。さらに終板近くの線維輪に亀裂が生じ、椎間後方で軟骨基質の増大、2型コラーゲンの増加が認められた。椎間不安定性の認められた椎間板のinterleukin(IL)-1β、Tumor necrosis factor(TMF)-α、Brain-derived neurotrophic factor(BDNF)の免疫染色では軽度の染色性の増加がみられたが、Reverse transcription/polymerase chain reaction(RT_PCR)法、Western blotting法を用いて観察したIL-1β、TNF-α、BDNFのmRNA発現には明らかな差異は認められなかった。一方、calcitonin gene related peptide、IL-1β、TNF-α、BDNFの腰部後根神経節での発現増加が認められ、疼痛関連行動との関連性が示された。われわれの作成した慢性疼痛ラットモデルの歩行異常は、椎間関節切除に伴う慢性的な椎間不安定性による椎間板変性そのものが原因であるのか、椎間不安定性に伴う馬尾、神経根、後根神経節への直接の刺激であるのか今後検討する必要がある。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初計画していた椎間板内の炎症性サイトカインの発現に明らかな差異がなかったため、椎間板そのものに原因を求めるとすれば、他の炎症性生理活性物質の検索が必要である。単純に馬尾、神経根の機械的圧迫に伴う神経症状である可能性もあり、今後下記のごとく詳細に検討していく予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
上記のごとく発痛機序が神経系そのものの障害が不安定性により生じている可能性があるため、馬尾、神経根の機械的圧迫の有無、神経根障害に伴う脊髄後角の変化などを検討する予定である。
|