平成22年度に確立したラット腰椎椎間関節切除に伴う慢性疼痛モデルの慢性疼痛発現メカニズムを組織学的、免疫組織化学的に椎間板変性を中心に平成23年度に検討した。その結果、椎体間の不安定性、椎間高拡大、椎間板組織の変性、線維輪の亀裂、軟骨増生を伴う骨棘形成がモデル動物の特徴であった。椎間板内には明らかな炎症性サイトカインの増大は認められなかったものの、後根神経節での疼痛関連物質の増大が認められた。平成24年度は椎間板の不安定性を基盤とした椎間板変性による疼痛関連行動が薬物治療で制御できるかどうかを検討した。ラットを用いて、腰椎椎間関節切除後、経時的に、歩行解析装置を用いて、疼痛関連行動の出現を観察した。処置後7週で、歩幅、最大接地面積、最大接地光学的輝度、速度、毎秒あたりのステップ数の有意な減少といった歩行異常が出現した。歩行障害の出現したラットを用いて、椎間板変性による疼痛関連障害が、侵害受容性疼痛か、神経障害性疼痛かどちらに起因するかを検討する目的で、非ステロイド性抗炎症薬、プレガバリン、ノイロトロピンを経口投与し、歩行機能を解析した。非ステロイド性抗炎症薬の投与では、速度、毎秒あたりのステップ数の改善が、プレガバリン、ノイロトロピンの投与では、歩幅、最大接地面積、最大接地光学的輝度の改善が得られた。今回作成したモデルでの歩行障害は侵害受容性疼痛、神経障害性疼痛が関連した歩行機能障害であることが判明した。インターロイキン(IL)-1β、Tumor necrosis factor (TNF)-αの拮抗薬、抗体の椎間板注入を試みたが、処置後7週でのラットでは、手技的に困難であり検討することができなかった。椎間板そのものの変性過程がこの疼痛行動に寄与しているのか、椎間不安定に伴う脊髄、馬尾、神経根の障害によるものかは今後の検討が必要である。
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