研究課題/領域番号 |
22591643
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
内山 善康 東海大学, 医学部, 准教授 (80317784)
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キーワード | 骨格筋間質幹由来細胞 / 細胞移植 / 末梢神経 / 生体吸収チューブ / シュワン細胞 / 神経周膜細胞 / 人工神経 |
研究概要 |
前年度までの成果として、「骨格筋間質由来幹細胞(Sk-34,Sk-DN細胞)は損傷した坐骨神経内でシュワン細胞、神経内膜・周膜細胞へと活発に分化し、ワーラー変性を起こした有髄・無髄両神経軸索を再生する」ことを示した。即ち、Sk-34、Sk-PN両細胞群は共に末梢神経再生能を有していることが確認できた。そこで今年度は、得られた成果を臨床応用に一歩近づける目的で、骨格筋間質由来幹細胞をより効率的に増幅し、神経損傷治療に応用することを試みた。骨格筋間質由来幹細胞群を抽出した後、分離・精製せずに分化を抑えた形で増幅培養し、前年度同様の「マウス坐骨神経損傷モデル」を用いて分化能力を検討した。その結果、末梢神経系細胞への分化能力には全く変化なく、むしろ少量の筋肉から大量の移植細胞が得られることが確認できた。また、この増幅幹細胞系では骨格筋細胞への分化能が大幅に低下しており、非骨格筋系の組織への応用に際してはさらに有利であることが判明した。この結果を受けて、今後の実験はこの「骨格筋由来総合増幅型幹細胞群」を利用して行うこととした。今年度第二のステップとして、次に実際に欠損した神経再生への応用を検討した。マウス坐骨神経を完全断裂し、その部分をシリコンチューブ、生体吸収性チューブで架橋し、その中に増幅型幹細胞群を注入する実験を行った。その結果を以下に示す;(1)当初、臨床で使用されている生体吸収性人工神経(PGA tube)は小動物(特にマウス、ラット)に使用するにはあまりにも口径が大きいこと、硬度が強過ぎること、また、1~2ヶ月では全く分解しないこと等から、本実験には不向きであることが明らかとなった。現在、同様の材料でさらに小径で柔軟な形に加工できないかを検討している。(2)代わりにシリコンチューブを用いた実験では、予想通り欠損部分に移植細胞由来GFP陽性のシュワン細胞、神経内膜・周膜細胞が軸索再伸展を補助する形で存在し、神経そのものを架橋していた。これは、僅か6週間での結果であり、非移植群に比べて有意に早い回復であり、現段階では上々の結果と考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
移植幹細胞群をソーティングすることなく、より少量の骨格筋サンプルより増幅培養する方法を開発したことは、臨床応用に一歩近づく成果であると考えている。また、今年度開発した「骨格筋由来総合増幅型幹細胞」群では、骨格筋細胞への分化能が大幅に低下していることが明らかとなった。これは、非骨格筋系の組織への応用に際してさらに有利である。同時に、血管系再構築の能力も有していることから、様々な組織再生治療に応用できる可能性が示された(神経-血管網は身体すべての組織器官に共通であるため)。当初利用予定であった人工神経・(生体吸収チューブ)は、本研究には不向きであることが判明したが、現在代替え法を検討している(次項参照)。
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今後の研究の推進方策 |
現行、臨床で使用されている生体吸収性人工神経(PGA tube)を利用することが不可能であることが判明したこと。また、シリコンチューブはあくまでも実験的であり、臨床応用には不向きであるため、現在、その代替法として、同種マウスの腸管、大動脈、大静脈を液体窒素処理またはアルコール処理し、架橋チューブとして利用することを検討している。予備実験では好結果が得られていることから、上記のいずれかを利用して、当初の目的(より長い神経欠損を治療する)を達成できると考えている。
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