研究課題/領域番号 |
22591647
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研究機関 | 関西医療大学 |
研究代表者 |
中塚 映政 関西医療大学, 保健医療学部, 教授 (30380752)
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キーワード | 疼痛学 / 脳・神経 / 神経科学 / 生理学 / グリア / シグナル伝達 / 脊髄 / 神経伝達物質 |
研究概要 |
非必須アミノ酸に属する化合物であるSerineは、神経細胞の発達、生存、形態形成にとっては必要不可欠なアミノ酸である。神経細胞の必須な化合物は、グルコースと酵素であり、グルコースからのSerine合成はグリア系のアストロサイトで行われている。Serineは、アストロサイトから放出される伝達物質のひとつで、N-methyl-D-aspartic acid(NMDA)受容体の共作動物質でもある。SerineはNMDA受容体のstrychnine非感受性グリシン結合部位に作用するグリア由来の伝達物質としても知られており、中枢神経系において、興奮性神経伝達の重要な役割を担っている。脊髄レベルにおける痛覚伝達機構に対するSerineの役割はいまだ不明であり、今回、成熟ラットから作成した脊髄横断スライス標本の膠様質細胞にパッチクランプ法を適用し、L-serineが脊髄膠様質の興奮性シナプス伝達と抑制性シナプス伝達にどのような作用を及ぼすかを検討した。-60mVの膜電位固定下で、ストリキニン存在下に、NMDAを投与すると一過性の内向き電流が生じた。このNMDA電流の振幅をL-serineの存在下と非存在下で比較したところ、L-serine存在下の振幅の度合いが有位に増加した。0mVの膜電位固定下で、L-serineを投与すると一過性の外向き電流が生じた。この一過性の外向き電流は、ストリキニンで抑制された。以上の結果から、アストロサイトから放出されるグリア由来伝達物質として知られているL-serineは脊髄後角膠様質細胞において生理的条件下でグリシン受容体を活性化する。一方、NMDA受容体のstrychnine非感受性グリシン結合部位に作用し、その受容体活性化を増強することが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
グリア関連因子が脊髄レベルで痛覚情報伝達を修飾することを明らかにすることができた。本結果はグリアが痛みに直接的に関与することを示唆している。
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今後の研究の推進方策 |
モデル実験での成果が少ないことが今後の課題である。
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