我が国には、脊柱靭帯骨化症という脊椎の靭帯が骨化する疾患が存在する。なかでも、頸椎に多発する後縦靱帯骨化症の難病で、脊椎後方靱帯の異所性骨化により脊髄麻痺を来す根治的治療方法がない、難治性疾患の一つである。我々は、この疾患特異的タンパク質を探索し、発症メカニズムの解明と医薬品開発を行う目的で研究を開始した。後縦靭帯骨化症98症例の血液、摘出組織から疾患特異的なタンパク質を発見した。それらのタンパク質を逆相HPLC精製、SDS-PAGEによる分離、LC-MS-MS解析を繰り返し、SAS統計、MASCOT解析にて、特異的タンパク質を同定し、立体構造解析を行った。この疾患特異性を立証するために、in vitro実験では、iPS ; induced pluripotent stem cells靭帯誘導細胞、間葉系幹細胞にこの遺伝子をsiRNA ; small interfering RNAにてノックダウンしたところ、細胞が骨化を示すことが確認された。in vivo実験では、トランスジェニックマウス、ノックアウトマウスの作製を行っており、疾患と同じ靭帯骨化を示すことを病理組織学的に立証している。さらに、血液からDNAを抽出増幅し、一塩基多型(SNPs ; Single Nucleotide Polymorphisms)解析を行ったところ、疾患特異的タンパク質の遺伝子にSNPsを確認できた。 我々が作製した脊柱靭帯骨化モデルマウスを使い、疾患特異的タンパク質から作製した靭帯骨化抑制剤の生体内投与を行い、靭帯骨化を予防する薬物吸収濃度の閾値を決め、多臓器との可逆反応の追跡研究を行い、近い将来、安全な安心できる医薬品として、橋渡し研究への基盤研究を実施する。
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