研究概要 |
平成24年度は収束超音波による抗腫瘍作用の解析をマウス固形肉腫を対象に行った。 1.細胞の継代と腫瘍細胞浮遊液の調整:Sarcoma180をマウス腹腔内で継代し,実験腫瘍とした。 2.超音波照射装置:長さ8.5 mm, 幅1 mmの限局した部位に超音波を収束させることが可能なトランスデューサー(日立中央研究所製)と,増幅器やコントローラーを組み合わせて用いた。 3.収束超音波照射:Sarcoma180細胞を含む腫瘍細胞浮遊液をマウスの背部皮下へ注入し,腫瘍径が1.5cmになった時点で,マウスを固定台に設置,腫瘍部を専用の水槽で水没させ、XYZ stageに接続した超音波画像モニターで腫瘍部を描出できるよう位置決めを行い,収束超音波を腫瘍部へ単回照射した。周波数は2MHz,出力は10Wで10秒間照射した。水槽内は脱気水を満たし,38度に保った。 4.評価ならびに結果:(1) 経時的な腫瘍の観察と組織学的検討:経時的に腫瘍最大径を観察すると,対照では徐々に腫瘍径が増大していたが,照射群における増大は軽度で有意に小さかった。(2) マクロファージ遊走阻止因子(MIF)発現の検討:抗MIF抗体による腫瘍の免疫組織学的検討では,照射群のMIF発現が抑制された。集束超音波照射後のマクロファージ浸潤と誘導にはMIFが関与していると考えられた。(3) 組織中におけるCD4陽性細胞およびCD8陽性細胞の検討:非照射群腫瘍組織ではほとんど認められなかったが,照射1週後では1視野あたりCD4陽性細胞が平均4個,CD8陽性細胞が平均6個であった。(4) Tunel陽性細胞の検討:1週後の時点において非照射群腫瘍組織では1視野あたり平均5個,照射群では12個であった。
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