研究課題/領域番号 |
22591660
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
井手 淳二 熊本大学, 大学院・生命科学研究部, 准教授 (10253725)
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研究分担者 |
水田 博志 熊本大学, 大学院・生命科学研究部, 教授 (60174025)
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キーワード | 腱板再生 / 腱板骨移行部 / 細胞外基質 / 生体材料 / 線維芽細胞増殖因子 |
研究概要 |
研究目的は、生体材料を用いた腱板骨結合部の再生過程における維芽細胞増殖因子(FGF-2)局所投与の及ぼす影響を評価し、その有効性を検証することである。 1、20週齢の雄Sprague-Dawleyラット(以下SDラット)を使用した。SDラット腱板に矢状断方向3mm、前額断方向5mmの腱骨結合部を含めた欠損をつくり、この欠損部に3×5×0.6mmのヒト真皮由来細胞外基質組織をグラフトした腱板再建モデルを作成した。これをコントロール群(グラフト群)とし、フィブリン糊を担体としてFGF-2(100μg/kg)を局所投与したグラフトFGF治療群を作成した。術後2週で実験動物を安楽死させ、グラフト骨結合部を採取しPCNA免疫染色による増殖細胞数の定量評価を行った。グラフト群とグラフトFGF治療群のPCNA陽性増殖細胞数は、それぞれ平均406±25個と平均599±30個であり、グラフトFGF治療群が有意に多い結果であった(p=0.002)。本研究結果から、FGF-2は腱板再建部の修復過程の初期に作用し、グラフトへの増殖細胞浸潤を増加させ、いくつかの成長因子を介してコラーゲン形成、線維軟骨形成の促進に寄与したと推察された。 2、生体力学的評価のために、正常SDラット腱板骨結合部の最大確綻強度と剛性を計測した。張力測定器(STA1225, Orientec)を用いた。最大破綻強度は42.9±15.1N、剛性は19.0±6.9N/mmであった。この結果は、グラフト群とグラフトFGF治療群の再生腱骨結合部の強度が正常の何割程度であるかを解析できる点で重要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
生体材料を用いた腱板骨結合部の再生過程における維芽細胞増殖因子(FGF-2)局所投与の及ぼす影響に関して、組織学的評価、分子生物学的評価は終了しており、生体力学的評価を行う予定である。コントロール(正常)の生体力学的評価は終了しており、実験群の評価を平成24年度で終了させる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
ヒト真皮由来細胞外基質を用いた腱板骨結合部の評価として、本腱板再建モデルにおいて再構築された腱骨結合部が長期経過観察において、どの程度まで組織学的に修復するのか、オリジナルの腱板骨結合部の再生が可能であるのかを検討する。これまで、この再構築過程を促進する要因の1つである生物学的因子として線維芽細胞増殖因子を検討してきたが、他の成長因子についても検討する。さらに環境因子・機械的負荷因子として外固定と他動運動の及ぼす影響について評価する。
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