研究概要 |
本研究の目的は骨肉腫に対する標準的化学療法におけるKey Drugであるドキソルビシン(DOX)に現在臨床応用されている超音波造影剤(マイクロバブル)と治療的超音波エネルギーを応用することで新規ドラッグデリバリーシステムを構築し、これを薬剤耐性骨肉腫に対する新規治療法へと結び付けていくことである。我々はまず新規ドラッグデリバリーシステムを使用した抗癌剤の骨肉腫細胞に対する効率よい導入条件についてin vitroで確認を行った。その結果に基づき、新規ドラッグデリバリーシステムを使用することにより骨肉腫細胞の増殖及び肺転移がDOX単独使用群に比べ、有意に抑制されることをin vitro, in vivoの両方において確認できた。さらにこのシステムではDOX単独使用群の約1/5の抗がん剤使用量でほぼ同等の抗腫瘍効果を得ることができた。この新規ドラッグデリバリーシステムを使用した場合、腫瘍内のDOXの濃度はcontrolに比べ1.5倍に上昇しており(p<0.05)、我々の構築した新規ドラッグデリバリーシステムではEPR効果により腫瘍特異的にDOXとバブルリポソームを高濃度に集積させ、さらにそこへ超音波を照射することで引起こされたキャビテーション、ソノポレーションによって腫瘍組織内へ高濃度のDOXを取り込ませることが可能であったと考えられた。これは結果として宿主の有害事象を軽減できる可能性があることが示唆された。さらにマウスを使用したin vivoの実験系ではDOX単独使用群に比べドラッグデリバリーシステムを使用することで、骨肉腫担がんマウスの生存率が有意に延長できることが確認できた。これはひとつには局所効果の増強作用によるものと考えられる。またこの詳細なメカニズムは不明であるが、肺転移の結節数も抑制されておりこの結果も生存率延長に寄与したと考えられた。
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