研究概要 |
研究の目的:我々は骨肉腫の発生・増殖・転移・がん幹細胞維持におけるHedgehogシグナルの機能の解析を行ってきた。ヒト骨肉腫においてHedgehogシグナルが活性化しているのを確認した後にSmoothend(SMO)をターゲットとして阻害したところ、in vitro,in vivoにおいて細胞周期制御による骨肉腫の増殖抑制作用を示すことを報告した。またSMOをノックダウンすると細胞運動や浸潤能が低下することを見い出している。Hedgehogシグナルの骨肉腫における機能を詳細に解析し、他のシグナル経路とのクロストークを含め、細胞移動、転移のメカニズムを明らかとし、骨肉腫の新規分子標的治療法の確立に貢献する。 方法と結果:1.定量的PCRにより、ヒト骨肉腫細胞株及び臨床検体においてGLI2の発現上昇を認めた。またGLI2結合配列を用いたluciferase assayにて骨肉腫細胞におけるGLI2転写の亢進を認めた。2.GLI2阻害剤やsiRNAを用いてGLI2を抑制すると、正常骨芽細胞では増殖抑制作用を示さないが、骨肉腫細胞では増殖が抑制することを見いだした。3.GLI2の抑制により、細胞周期の正の制御因子cyclinDl、SKP2、pRbの発現減少と負の制御因子p21の発現上昇が見られ、骨肉腫細胞株がG1 arrestを起こしていることが示された。4.恒常活性型GLI2の強制発現により、間葉系幹細胞株の増殖は促進し、細胞周期は正に制御されていることが示された。5.GLI2 shRNAを遺伝子導入した骨肉腫細胞株をヌードマウスに移植すると、有意な腫瘍増殖抑制効果を認め、生存期間も延長した。 考察:骨肉腫においてGLI2の機能を制御すると、腫瘍増殖がin vitro、in vivoにおいて抑制できることを見いだした。現在、HedgehogシグナルやGLI2をターゲットにした研究をさらに発展させたうえで治療臨床応用すべく、具体的に研究を進めている。
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