研究概要 |
近年,宇宙飛行において無重力空間での骨量減少や,長期臥床患者での骨代謝動態が研究され,細胞レベルでは重力からの影響をメカニカルストレス(シェアストレス,伸張刺激,静水圧,電流刺激など)と捉えた研究が行われている.メカニカルストレスが細胞環境において,細胞の成熟・分化に重要な役割を果たしていることが明らかになりつつある.しかし電気刺激をメカニカルストレスと考えた研究はない.本研究は,メカニカルストレスの解明に用いられている骨代謝研究を応用し,電気刺激による骨成熟促進効果の新しい知見を骨芽細胞を用いて検証することを目的としている.今回,われわれは骨芽細胞株MC3T3-E1細胞に対して交流電気刺激を行い,その反応をMAPK(mitogen-activated protein kinase)であるERK(Extracellular Signal-regulated Kinase)およびJNK(c-Jun N-terminal kinase)のリン酸化を指標とし,細胞応答を検証したウエスタンブロット法によってERKのリン酸化を測定した.20分間の交流電気刺激により,ERKおよびJNKのリン酸化は無刺激群よりも有意に上昇した.つまり,骨芽細胞は交流電気刺激からの信号を享受しており,その経路としてMAPKの中でERKおよびJNKがリン酸化されることが今回の実験からわかった.電気刺激が細胞内シグナルへと変換される応答メカニズムの解明できると,今後の臨床応用において,さらに有用なメカニカルストレスの条件や刺激方法の確立が期待できる.
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