経時的に自家骨に置換し得る人工骨としてβTCPを担体とする血管柄付き骨膜移植モデルにおいて、間葉系幹細胞(MSCs)の添加により骨形成が変化するかを検討した。Fischer344系ラット(7週齢)の大腿骨より骨髄液を用いて骨髄間葉系幹細胞を培養分化させた。二次培養後、回収した細胞を人工骨(βTCP)に播種し、その表面および気孔内で骨芽細胞に分化誘導因子および生物活性物質を添加しながらin vitroにて培養した。F344系ラット(7週齢)の脛骨内側面の骨膜を伏在動静脈を血管茎として挙上し培養人工骨をラッピングした後、大腿内側の皮下に移植した(MSCs添加群)。またコントロールとしてはMSCsを含まないβTCPを血管柄付き骨膜で巻いたものとした(C群)。MSCs添加群、C群とも各々8検体を作成した。移植後1週、2週、4週に移植人工骨を摘出し骨形成の評価(組織学的所見・ALP活性・オステオカルシン量)を行った。組織学的検査では両群ともにHE染色標本にて良好な骨形成が確認できた。ALPおよびオステオカルシンの上昇はMSCs添加群にて大きいが両群ともに旺盛な骨形成が認められ、両群間で明らかな差は認められなかった。以上の結果からラットを用いたβTCPに血管付き骨膜を付加したモデルにおいてはMSCsの添加の有無にかかわらず良好な骨再生能が認められることが判明し、実験モデルの一部変更を行った。今までの実験モデルでは血管付き骨膜を有する事が旺盛な骨形成能に大きく影響していると考え、新しいモデルでは骨膜を含めずに血管束(動静脈)のみを挙上して、βTCPブロックに作成した溝に血管束を付加した。現在、このモデルを用いて前回と同様に培養細胞播種βTCPに血管束を付加した群(MSCs+V群)、コントロールとしてはMSCsを含まないβTCPに血管束を付加した群(CV群)を用いて実験を継続している。
|