研究課題/領域番号 |
22591670
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
村田 景一 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (10382318)
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キーワード | 間葉系幹細胞 / βTCP / 血管束 / 血管付き骨移植 |
研究概要 |
昨年度の実験結果から、実験モデルを一部変更した。 【方法】7週齢Fischer344(F344)ラットの大腿骨からMSCsを採取し、標準培地(15%FBS含有MEM)を用いて初期培養を行った。2週間後に10cm径培養皿に播種し、デキサメサゾン(10nM)、アスコルビン酸(82μg/ml)添加標準培地で二次培養(14日間)を行い、骨芽細胞シートを採取した。11週齢F344ラットの大腿動静脈を顕微鏡下に挙上し、これらの血管束を円柱状βTCP(直径6mm、厚み10mm、気孔率75%:PENTAX社製SUPERPORE)に作製した幅2mmの側溝に通した。人工骨に血管束を通すのみの血管単独群(n=8)と血管束と人工骨の間に骨芽細胞シートを充填した骨芽細胞シート群(n=8)の2群を作製した。移植4週後に移植人工骨を周囲組織から剥離し、血管束とともに摘出し、組織像、アルカリホスファターゼ(ALP)、オステオカルシン(OC)、血管内皮増殖因子(VEGF)のmRNA量を測定し骨形成能の評価を行った。 【結果と考察】ALP、OC、VEGFは全てにおいて、骨芽細胞シート群が血管単独群と比較して高値であり、統計学的に有意差を認めた(p<0.05)。また、組織像において、骨芽細胞シート群では人工骨内に血管束から放射状に新生血管を認めたが、血管単独群では血管束と人工骨の周囲に軟部組織が介在しており、人工骨内の新生骨および新生血管をほとんど認めなかった。骨芽細胞シートを用いることによって、人工骨内部への新生血管の誘導および、血管束と人工骨の間を新生骨で充填できることが確認できた。血管束と人工骨の間を架橋できる骨芽細胞シートは、血管柄付き人工骨作製において有用である可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成22年度の実験結果から当初予定していた人工骨を血管柄付き骨膜でラッピングする実験モデルでは骨髄間葉系幹細胞の付加の有無による人工骨内への骨形成、血管侵入に差が見られなかった。そのため平成23年度に実験モデルの変更を行い、骨膜を含めずに血管束(動静脈)のみを挙上して、人工骨に作成した溝に血管束を付加した。以上の変更により実験の推進に予定より若干の遅れを生じている。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度の実験結果から骨芽細胞シートの血管柄付き人工骨作製における有用性が示唆されたため、平成24年度はさらに検体数を増やし、その有用背を証明するとともに、マイクロCTなどを使用して新生骨、新生血管の誘導形態や機序を解明してゆく予定である。さらにその結果について日本整形外科学会基礎学術集会および他学会にて報告予定である。
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