再生医療技術に基づき、ラットを用いた動物実験にて将来的に自家骨に置換し得る人工骨beta-tricalcium phosphate(βTCP)を担体とする血管柄付き人工骨移植モデルを作成し、間葉系幹細胞(MSCs)の添加により血管・骨形成が変化するかを検討した。 7週齢F344ラットの大腿骨骨髄から骨髄由来間葉系幹細胞(MSCs)を採取し、二次培養を行い骨芽培養シートを作成した。マイクロスコープを用いて11週齢F344ラットの大腿動静脈を血管束として挙上し、採取した骨芽細胞シートと共にβTCP(径6mm、長さ10mm、気孔率75%)に作製した側溝(幅2mm)に組み合わせたsV群、培養細胞播種βTCPと血管束を組み合わせたcV群、人工骨に血管束のみを組み合わせたV群を作製した(各群n=8)。術後4週でサンプルを摘出し、組織像およびreal time RT- PCRによりオステオカルシン(OC)、アルカリフォスファターゼ(ALP)、血管内皮増殖因子(VEGF-A)のmRNA発現量を測定し新生骨および新生血管を比較評価した。 術後4週の組織像でsV群ではcV群、V群と比較してより旺盛な骨形成および血管新生が血管束を中心として認められた。OCのmRNA発現量はsV群がV群、cV群よりも高い値を示し(p<0.01)、cV群はV群より高い値を示した(p<0.01)。VEGF-AではcV群、sV群ともにV群と比較しで高値を示した(p<0.01)。 ラット大腿動静脈を血管茎として移植した人工骨モデルにおいて血管茎と人工骨の境界部にMSCsを高濃度で含有した骨芽細胞シートを配置する事により移植血管束周囲から人工骨内に旺盛な血管新生および骨新生が獲得できた。本技術を臨床的に応用する事により難治性偽関節治療における有用な治療戦略となりえる事が示唆された。
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