5週齢のC3 H/Heマウスに抗IL2レセプターα単抗体(PC61)と抗IL2単抗体(S4B6)をそれぞれ3日おきに6回2mg投与し、抑制性T細胞(Treg)の動態と自己免疫病の発症の有無を経時的に検討した。その結果両抗体の最終投与後3日で脾臓におけるTregの量をFACSで検討したところ、両抗体投与群ともTregは0.2%以下であった。無処置正常マウスにおいてはこの値は7%前後である。抗体の投与を中止してから6週後には、両抗体投与マウス共にTregの量は正常マウスの半分ほどに回復した。新生児からPC61を投与したマウスにおいては性成熟したあとでいくつかの臓器に自己免疫病が自然発症することが報告されている。今回の実験はマウスが成熟してから抗体を投与するが、これらのマウスに臓器局在性自己免疫病の発症が見られるかを調べるために抗体投与後1ヶ月おきに採血し、6ヶ月で屠殺した。自己抗体の有無は甲状腺、眼、涙腺、唾液腺、胃、腸、副腎、膵臓、腎臓、精巣、卵巣、前立腺の凍結切片を作成し、血清で免疫染色することにより、蛍光顕微鏡で検討した。その結果、切片と反応する抗体はいずれのマウスからも検出されなかった。また個々の臓器のヘマトキシレン・エオジン染色でも炎症像は見られなかった。これは成熟マウスにおいて一定期間体内からTregが消失しても自己免疫病にはなりにくいことを示している。 C3H/HeマウスにPC61を投与してTregを削除し、C3Hマウス由来の骨肉腫LM8を1x10^6個皮下に移植しておくと、腫瘍の増殖や肺および肝転移に抑制効果が見られた。
|