研究概要 |
(1)10週齢のMIFノックアウト(MIFKO)マウス36匹と野生型(WT)マウス36匹を使用し、両側膝関節内側に1cmの縦切開を加え,マイクロ用メスを用いて内側側副靱帯を鋭的に全層切離した.両群において、MCL損傷作製した後3,7,14,28日目にそれぞれ3匹ずつ屠殺し、MCLを採取しRNA抽出を行った。これらRNAを逆転写した後、TNF-α,VEGF,MMP-2,MMP-9,MMP-13に対するRT-PCRを行ない、Thermal Cycler Dice Real Time Systemを用い、GAPDHプライマーをデータの標準化として定量化した。 (2)WT群ではMCL損傷後3日目で有意なMIFのmRNAの上昇を認めた(p=0.0101)。MMP-2の遺伝子発現は損傷後14日まで両群ともに次第に上昇するが、損傷後28日目ではMIFKO群はWT群と比較し有意に低値であった(p=0.014)。MMP-13の遺伝子発現レベルはWT群では損傷後7日目でピークを示し、MIFKO群に比し有意に低値であった(p<0.0001)。VEGFのmRNA発現はWT群では損傷後28日目で上昇しMIFKO群のVEGF遺伝子発現に比し、有意に高値であった(p<0.0001)。TNF-αとMMP9に関しては両群に有意差を認めなかった。 (3)前年度までの研究にて研究者らはMIFKOマウスはWTマウスと比較しMCL損傷損傷後28日目で有意に力学特性の低下することを明らかにしている。さらに組織学的評価ではMIFKOマウスは長期にわたりMCL損傷後の治癒組織は肥厚し、新生血管も少なく、細胞密度の増加を認めていた。以上の知見と本年度の剛Pの遺伝子発現の結果結果から、MIFKOマウスのMCL損傷後の治癒遅延はMMP-2とMMP-13の遺伝子発現の低下により起こったことが示唆された。
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